ゾーフィとゾフィーはイコールではない

 現在、絶賛公開中の空想特撮映画『シン・ウルトラマン』。時間が経つにつれて徐々に公開前は秘密とされていた部分が明らかになってきました。そのなかでも、これまでのウルトラマンたちとまったく異なる体色の「ゾーフィ」の姿に、映画を観ていない人たちからおどろきの声があがっているようです。

※これ以降の本文では映画のネタバレ事項に触れている部分があります。ネタバレを気にする方はご注意ください。

 ゾーフィという名前を聞いて、ウルトラマンを見たことのある人は「ゾフィーじゃないの?」……そう思うことでしょう。結論から言うと、ゾーフィとゾフィーは似たような立場にありますが、まったくの別人です。

 まず簡単にゾフィーの説明から始めましょう。ゾフィーは『ウルトラマン』(1966年)最終回で、ゼットンに倒されたウルトラマンを救助するために「光の国」からやって来た宇宙警備隊隊員(後に隊長に昇格)です。そして、第2期ウルトラシリーズが始まってウルトラ兄弟が新たに設定された際、その長男となりました。

 こうした経緯から、昭和の時代はウルトラ兄弟の中心としていることの多かったウルトラマンです。後にゾフィーが語り部となった『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』(1984年)という映画も製作されていました。

 一方のゾーフィは、『シン・ウルトラマン』の終盤に登場した、ウルトラマンと同じく「光の星」からの使者です。ウルトラマンと違って光の星の掟に忠実であるがため、地球人類が生物兵器となる可能性を危険視し、天体制圧用最終兵器「ゼットン」を起動させて地球はおろか太陽系もろとも消滅させようとしました。

 いわゆる映画のラスボス的立ち位置にいます。しかし、悪人という雰囲気でもなく、人間を理解しようとするウルトラマンと反対に、人間をまったく理解していないゆえの行動でしょう。人間にとっての害虫駆除と同じ感覚でいるのかもしれません。

 ちなみに映画公開前からゾフィーの登場は示唆されていました。映画のキャッチコピーである「そんなに人間が好きになったのかウルトラマン」は、『ウルトラマン』でゾフィーの言った「そんなに地球人が好きになったのか」の引用ということはファンにはすぐにわかったからです。

 しかし、立場こそ酷似しているものの、地球に来た目的がほとんど真逆の展開になるとは、大体の人は想像していなかったことでしょう。筆者も劇場で観た時、おどろきと感心の気持ちがあふれてきました。マルチバースという昨今のウルトラシリーズに使われている言葉が出てきたことから、いわゆる「並行同位体」というものかもしれません。

 このゾーフィですが、筆者のような古参には若いファンの人たちよりは先の流れに気づけたと思います。それはウルトラマンが「ゾーフィ」と名前を呼んだ時、思わず脳裏で「今、ゾーフィと言いました?!」と思ったからでした。そう、ゾフィーでなくゾーフィという言葉は年配の人ほど記憶にある言葉だったのです。

『シン・ウルトラマン』ポスタービジュアル (C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

半世紀前に生まれた謎の存在ゾーフィ

 実はゾーフィというのは、『ウルトラマン』放送終了後から第2期ウルトラシリーズ頃くらいまで出版などで見かけた謎の宇宙人のことです。

 その説明文には…
「宇宙人ゾーフィ 身長2メートル 体重50キロ 特徴宇宙からやってきた 宇宙恐龍ゼットンをあやつって大あばれさせる ウルトラマンそっくりに変身する 力はないが頭はよい スーパーガンによわい」
 …と書かれていました。

 これを見ると一目瞭然ですが、この説明は主に「ゼットン星人」のものです。ちなみにゼットン星人という名前が作られたのは放送後でしたが、実際に書籍で見かけるようになったのは第2期ウルトラシリーズ終了後。それまで、ほとんどの子供たちはケムール人だと思っていました。

 実はこの「宇宙人ゾーフィ」の説明文は、円谷プロが配布した文字資料の引用。つまり書籍の誤字の類でなく、大元の資料の間違いが世に出回ったわけです。どうして間違いが起きたかは定かではありませんが、当時は映像がたやすく見れる時代でなかったことが一因かもしれません。

 同時に本来のゾフィーも資料が少なく、『ウルトラマンA』(1972年)で着ぐるみが新たに作られるまではスターマークとウルトラブレスターというリベット状の突起の位置が違うイラストが多く見受けられました。つまりウルトラ兄弟の設定が生まれ、着ぐるみが作られたことで初めてゾフィーは存在が確かなものになったわけです。

 こういった事情を組み込んで、『シン・ウルトラマン』ではゾフィーとゼットン星人の設定を組み合わせたゾーフィという新たなキャラクターが生み出されました。まさしく「嘘から出たまこと」、今風に言うと「まさかの公式化」というものでしょう。

 ちなみに従来のウルトラ族にはなかった金色の身体に黒いラインは、『ウルトラマン』のデザインを手がけた成田亨さんが発表した『NEXT』がモチーフになったと言われています。このカラーリングがウルトラマンにはない独特の雰囲気を生み、傍にいるだけで圧を感じる、無言のプレッシャーと言えるようなものを出しているのではないでしょうか?

 余談になりますが、『ウルトラマン』に登場した時のゾフィーのトサカにあたる部分は黒かったそうです。しかし、光の加減で黒く見えたと思ったのか『A』で新しく作られて以降、ゾフィーのトサカはウルトラマンと同じく銀色で塗られました。それが現在まで踏襲されています。

 しかし、宇宙人ゾーフィのイラストを見ると必ずトサカ部分は黒で塗りつぶされていました。つまり設定的には間違えていた資料にもかかわらず、デザイン的には間違えることなく伝わっていたと推測されます。それゆえにゾーフィもトサカを黒くしているのでしょう。こういった樋口真嗣監督と庵野秀明さんの原典に対するこだわりが、本作を名作たらしめてるのだと筆者は思います。