最高裁は今月19日、相続時のマンション評価についての国税当局が行った処分を適法と認めた。翌朝の新聞には「国税【宝刀】にお墨付き」という見出しが踊った。「伝家の宝刀」といわれるのは、財産評価基本通達総則6項、「6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」を適用して課税処分を行うことだ。

納税者は課税処分に対し審査請求の棄却後、税務訴訟し一審、二審に続き、最高裁でも敗訴した。詳細は割愛させていただくが、被相続人が平成21年に13.9億円で購入したマンション2物件を平成24年に発生した相続時の評価額を3.3億円として申告を行ったのだが、税務調査の後、平成28年に国税当局は鑑定評価額12.7億円を採用して前述の「伝家の宝刀」を使って相続税の更正処分を行った。

そして司法は、判決によってこの伝家の宝刀にお墨付きを与えたというわけだ。

相続税の申告の際、ご案内のとおり宅地については路線価を使って評価する。建物については固定資産税評価額が基礎となる。このこと自体が財産評価基本通達に依るものだ。そして伝家の宝刀もこの通達のなかに包含されているわけだ。通達はいわゆる法律ではない。相続税法や、租税特別措置法および政令、省令ではなく、税務行政における通達によって定められているのだ。

行政庁の組織のなかでの上意下達の通達ではあるが、実務上この通達を拠り所に税務申告などが行われている。宅地の評価は路線価により評価することが一般的である。相場の取引価格(時価)と路線価評価額に大きな乖離があるからといってたちまち路線価評価を認めないとすることは問題だろう。実は今回の事例でいえば、マンション購入時、被相続人は90歳台であり、同時期に孫との養子縁組も行っており、マンション購入資金は銀行借入で賄っている。(相続人らが保証人になっている)銀行サイドに反面調査を行うと行内書類には相続対策でマンションを購入するための資金であるという記載が残っていたそうだ。また相続が発生した翌年にマンションの売却も行っている。

財産評価基本通達による評価額が時価と乖離していることが問題だというのではなく、この事例では「租税負担の公平に反する」、俗っぽく言ってしまえば、節税目的の行為としてやり過ぎだということだ。もし、例えば銀行借入に頼らず自己資金で購入し、年齢的にももう少し若い人が当事者だったらどうなのだろうか。それでも国税当局は伝家の宝刀を抜くだろうか。

司法がお墨付きを与えたという報道のされ方をするが、司法は少なくとも「通達」の拘束を受けてない。今回の判決では、納税者が敗訴し、国税当局の財産評価基本通達総則6項(伝家の宝刀)の適用を認めたカタチにはなったが、当然ながらケースバイケースだろう。通達行政を行っておきながら、通達に従って評価した額が時価と乖離したからという理由で伝家の宝刀を抜かれたりすれば納税者はなにを拠り所にすればよいのか。今後の税務行政において「伝家の宝刀」の乱発がないことを信じる。

◆北御門 孝 税理士。平成7年阪神大震災の年に税理士試験に合格し、平成8年2月税理士登録、平成10年11月独立開業。経営革新等認定支援機関として中小企業の経営支援。遺言・相続・家族信託をテーマにセミナー講師を務める。