かつては祇園祭の厄よけちまき用として重用されたが、枯死して絶滅の危機に陥っていた京都市左京区花背産のチマキザサが、関係者の努力で復活しつつある。シカよけの防護柵を設置するなどの対策に取り組んだ結果、約15年ぶりに和菓子店などへササの出荷ができるようになった。厄よけちまき用も確保できる見込みだ。地元住民は「他にはない品質と言われていた花背のササが、よみがえってうれしい」と喜ぶ。

 花背別所地区の山中で9月下旬、防護柵に囲まれた斜面に高さ1・5メートルほどに伸びたチマキザサが青々と育っていた。別所自治振興会の藤井優三会長(73)は、葉の付け根から20センチほど下の茎を鎌で刈り取りながら、「ようやく復活の道筋がついた」とほほえんだ。収穫したササは大きさや傷を選別した後、長期保存できるよう3日ほど天日干しにするという。

 花背産のササは、葉の裏に毛が生えておらず、良い香りとしなやかさが特徴。長年、祇園祭の厄よけちまきや麩(ふ)まんじゅうなどの和菓子を包む原材料として出荷され、地元の貴重な収入源となっていた。

 ところが2003〜07年にかけて、ササが一斉に開花して枯死する現象が発生し、ほぼ全滅。通常なら種子から次世代のササが生まれ、10年ほどで元の状態に戻るというが、シカが新芽を食べ尽くしてしまう被害が深刻化し、再生が困難になっていた。

 そのため、13年に地元住民や市、京都大関係者らがチマキザサ再生委員会を発足。雪や斜面に強いシカよけ柵を設置し、生育状況を定点観測するなどして大切に育ててきた。

 11年から再生の取り組みに関わる京都大大学院の貫名涼助教(環境デザイン学)は「京都の暮らしと文化に根付いており、なんとしても復活させないといけなかった。だが、ササを意図的に再生させた例は他地域にもなく、生態の調査から始めた」と苦労を振り返る。

 日当たりや地質、積雪量などで生育具合が変わるとみられ、防護柵で囲んだ約7ヘクタールのうち、今年収穫できたのはわずか0・6ヘクタールで約5万枚。約1千万枚を出荷していた枯死前に比べると量はわずかだが、貫名助教は「ササを乾燥させる技術や、販路は時間が空くと途絶えてしまう。少しでも早く出荷できる体制を取り戻すことが重要」と強調する。

 今秋以降、約3万枚を和菓子店などに販売する予定だ。以前は花背産ササを仕入れていたという生麩(ふ)の老舗「麩嘉」(上京区)の主人小堀周一郎さんは「他産地とは香りが全然違うし、乾燥技術も高い。ぜひまた使いたい」と期待する。祇園祭の厄よけちまき用にも約1万5千枚確保できる見込みという。

 地元では本格再生に向けて昨年3月、「花脊別所チマキザサグループ」を立ち上げた。参加する住民は73〜94歳の8人と高齢化は深刻だが、代表も務める自治振興会の藤井会長は「若い人の力も募りながら必ず達成したい」と言葉に力を込めた。

(まいどなニュース/京都新聞・堤 冬樹)