元タカラジェンヌで、女優としても活躍した大路三千緒(おおじ・みちお)さん。1920年(大正9年)生まれで、現在99歳。宝塚歌劇の発展に大きく貢献した人物たちの「宝塚の殿堂」にも選ばれた存命中の最高齢OGジェンヌとなる。また退団後はNHKの朝ドラ「おしん」でヒロインの祖母役など、女優としても活躍してきた。

 第2次世界大戦が開戦した1939年(昭和14年)、大路三千緒さんは宝塚歌劇団の初舞台を踏んだ。同期は越路吹雪さん、乙羽信子さん、月丘夢路さんらが顔を揃える。同期が早くに退団し芸能界に転身する中、大路さんは60歳まで在団し、花・雪組の組長として重責を担った。退団後は90歳まで劇団で後輩を指導。その功績から、宝塚歌劇100周年を記念して、2014年4月に宝塚大劇場内に開館した「宝塚歌劇の殿堂」に天津乙女さん、春日野八千代さんらと共に名を連ね、現役時代の写真などが展示されている。

 現在は宝塚市内の介護付き老人ホームで生活。耳はやや遠く、車いすではあるが、三食もしっかりと取り、新聞を読み、字幕でテレビも楽しむなど朗らかな毎日を送っている。「タカラヅカ時代?長くいて、とても楽しかったですよ!でもすっかり忘れるのが上手になっちゃって」と笑顔を見せる。

 やはり40年以上男役をしていた“クセ”なのか、カメラを向けると笑顔を見せ、自然なポーズをとる大路さん。「タカラヅカでは次々と新しいお芝居があるから、役も歌も忘れていかないと、新しいのが覚えられないの」と茶目っ気たっぷりに答える。

 タカラヅカでは組長を歴任し、温和な人柄から組子たちから慕われた。姪で元タカラジェンヌの葦笛(あしぶえ)るかさんは「本当に優しくて、声を荒げたところなんて、みたこともないんですよ」と語る。だがそんな大路さんだが、外部で組子から「組長!」と呼ばれることだけは、周囲の人がギョッとするため、恥ずかしかったという。「だからこうしたの」と口の前で両指をクロスさせ“×”を作り、外では呼ばないようにお願いしたことを楽しそうに振り返った。

 また、タカラヅカ以外の思い出に残る作品を問うと「おしん」と即答。おしんの“ばんちゃん”を演じたが、撮影時は「寒かったですよ」と懐かしそうに語る。テレビで大ヒットし、その後舞台でも上演。舞台では、テレビで子供時代のおしんだった小林綾子が成長し、青年期のおしんを演じた。「おしんは変わったけど、私は同じ役だったの」と懐かしんだ。

 来年100歳を迎えるにあたり、今年は市や県、そして安倍晋三首相の名前で国からも長寿の表彰を受けた。その賞状の年月日をなぞり「いまは令和なのね」と感慨深そうな様子も。長生きの秘訣を問うと、小首をかしげ「何にもない。いつの間にかなっちゃった」とほほ笑んでいた。

(デイリースポーツ・石川 美佳)