不要不急。エンターテインメントのほとんどが停止を余儀なくされた。そんなステイホーム期間を藤井隆(48)は前向きな気持ちで過ごそうと、青年期に影響を受けた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ある日どこかで』を家族で鑑賞する時間を作ったりした。

でも心はなかなか晴れない。中止になった舞台『雪やこんこん』も気がかりの一つだった。「身近に職を失った方もいたので非常に心苦しかった」と上半期を振り返る藤井に、コロナ禍を通してのエンターテインメントへの思いを聞いた。

エンタメは不要不急なのか?そんな議論を生んだコロナの時代。藤井は「私の発言によって不快に思われる方もいるだろうし、反感を与えてしまうかもしれないので言葉を慎重に選ばなければいけません」と前置きしながら「身近に職を失った方もいたので非常に心苦しかったし、自分が生業としている職業が不要だと言われているような気もしました。ただ私としてはもちろん、必要ですと言っていただけるものでありたいと思います」と胸の内を明かす。

三谷幸喜による舞台『大地』で、自粛明けすぐにエンタメの仕事に携わった。不安はゼロではなかったが、舞台に立ったことで人を喜ばせる必要性と責任を感じた。「お客さんは普段の半分。手足の消毒。体温を測り、マスク着用。会話も控えてもらう。お客様に対して沢山のご協力をお願いしてご迷惑をおかけしながら、安くはないチケット代を払っていただいた。そんな私が不要不急だとは、やはり言えません」と思いを新たにする。

悩み多き自粛期間中の希望になったのは、奇しくも出演した映画『みをつくし料理帖』だった。主人公・澪(松本穂香)は雲外蒼天の相の持ち主。困難を乗り越えた先には、必ずや真っ青な空を望むことができるという。

「澪と野江は洪水で家族を失い、翻弄されます。でも最後には二人で希望を見つける。自分ではどうしようもない、あらがえないことに巻き込まれた今こそ、二人は私たちに希望を与えてくれる。コロナを原因に公開延期をする映画が多い中で、角川監督は『今秋公開!』と断言されました。映画の内容もさることながら、その力強さも舞台中止で落ち込んでいた自分に希望を与えてくれました」と実感を込める。

公開は10月16日。監督の角川春樹が映画製作に初めて乗り出して大ヒットを飛ばした『犬神家の一族』(1976)と同日公開という不思議な偶然もある。「お客様をお迎えするにあたり、映画館は大変な準備をしてくださっています。お客様にも不安な部分があるかもしれません。でももし可能だったら映画館で観ていただきたい。私が受け取ったのと同じような希望を感じていただけるのではないかと思うからです」と願っている。

(まいどなニュース特約・石井 隼人)