「車掌、業務連絡、乗車ご案内いたします」「業務連絡、ご案内了解」。ホームや電車内で、こうしたアナウンスを耳にします。このアナウンスによって車いすユーザーや視覚障害者の乗車や降車の情報が多数の乗客に伝わり、障害のある女性が痴漢やストーカー被害にあっていることがわかりました。「降車駅で待ち伏せされ自宅まで後をつけられた」「ドア付近にいたら『ここだ!』とスーツ姿の男性が乗ってきた。ぴったり後方にくっついてきて、下着の色を聞かれたり、卑猥なことを繰り返されたりした」など深刻なケースが報告されています。アナウンスをなくすことは−。関西の鉄道事業者に聞きました。

■車いすユーザーや視覚障害の女性らが被害に

 一部の鉄道会社では、車いす利用者や視覚障害者などが乗降する場合、駅員と車掌らの情報共有などを目的にアナウンスが行われています。ところが、乗降する車両や降車駅を知ったごく一部の利用者が悪用し、障害のある女性が痴漢に遭っているといいます。また、アナウンスをしないよう求めたところ、「それなら乗せられない」と言われた経験のある障害者もいます。

障害者団体でつくる認定NPO法人「DPI日本会議」(東京)が8月下旬、被害の実態を公表しました。同団体は7月に国土交通省に改善を求める要望書を提出し、(1)鉄道事業者に被害の実態を伝える場を設けてほしい(2)各事業者に駅アナウンスを中止し、他の方法で安全確認をするように改めてほしいー2点を求めました。これを受け同省は「車椅子使用者等の乗降時の駅アナウンスによる情報伝達について」という事務連絡を出し、鉄道事業者に駅アナウンスによらない方法での情報伝達を検討すること、後日、各社の検討状況について報告を求めるとしました。また、全国60以上の鉄道事業者を集めたオンラインの場で、同団体が被害の実態を話しました。

同団体HPで公表した被害事例はいずれも深刻なものばかり。電車が動き出して間もなく男性が寄ってきて「品川でしょ?送ろうか?」何度も言われて、ずっと声を掛けられていた。やめてくださいと言っているのに周囲の人は誰も助けてくれなかった▽「夜遅くなり周囲が男性ばかりだったので、アナウンスをしないでくださいと頼んだがダメだと言われ、乗った号数まで言われた。男性がぴったり後方にくっついてきて、下着の色を聞かれたり、卑猥なことを繰り返された。怖くて声もでず、降りた駅で係員にアナウンスのせいだと泣きながら訴えたが、「警察に行ってください」といわれるだけ。心療内科にかかっている。電車は怖いからアナウンスがなくならない限り電車は乗れない▽アナウンスで行先まで言われたときに、一緒のドアから乗った男性に「こんな時間に障害者がなんで新宿なんか行くんだよ」と言われた▽発車後に別の車両から来た会社員の男性に「あの駅は良く知っているよ。送っていこうか?」と何回もしつこくされた。あの恐怖は今も忘れられない―として早期の改善を訴えています。

■アナウンス以外の方法、関西では

DPI日本会議の担当者によると、こうした駅アナウンスは20年前にはすでにあったとされ、主に関東地区の鉄道事業者が実施しているそうです。一方、東海、関西、九州ではアナウンス以外の方法を選ぶ社もあるようです。

 阪急電鉄は車内アナウンスを実施していません。乗車駅の駅員が乗車した車両、扉の位置などを社内電話で降車駅に伝えることで対応しています。「時間的な余裕があれば、車掌にも声掛けして情報共有を図っている」(広報部)といいます。

 神戸市営地下鉄を運営する神戸市交通局に聞くと、かなり以前、介助が必要な障害者の乗車を駅係員が誘導した際、係員の降車を待たずに扉が閉まってしまうという事案があり、再発防止のためアナウンスをしています。DPI日本会議の問題提起については、「こうした問題はこれまで予想だにしていなかった」と駅務統括所の担当者は驚いており、「今後はアナウンスに頼らないやり方を考えたい」と他社の事例も踏まえつつ検討する考えです。

 新幹線、在来線合わせ駅数1174(2019年4月1日)のJR西日本はアナウンスを実施しています。「安全を確保し、安心して確実にご乗車いただく(ドア挟み・引きずりの防止等)ため」(コーポレートコミュニケーション部)といい、今回の問題については「現在、国土交通省との意見交換会中であり、コメントは控えます」としています。

(まいどなニュース・竹内 章)