子猫が助けを求めていても、その場所が私有地なら足を踏み入れにくいもの。敷地外に出てくるのを待つか、所有者に断りを入れるかしなくてはなりません。神奈川県に住む生後約9カ月のこはくちゃんも、敷地外に出てくるのを待たれた1匹です。

こはくちゃんと家族が出会ったのは2020年10月31日、ハロウィンの夜。食事のあと何となくお父さんと当時小学1年生の息子さんが外を散歩しようかとなりました。お母さんは上2人のお姉ちゃんとお家でお留守番。すると、お父さんから電話です。

「子猫の声が聞こえる」

猫好きのお母さんは取るものも取りあえず、お父さんに指定された場所へ急ぎます。そこは近所の駐車場。なるほど声だけ聞こえて姿は見えず。寒い日ですから、早く保護してあげたい。車の下を覗くと、小さな目のようなものが2つ光っています。まるでジャック・オー・ランタンです。

しばらく3人で待つのですが、この日はとても寒い。息子さんがトイレに行きたいと言い出しました。自宅まで徒歩1分ほどですから、ひとまずお父さんと息子さんは帰宅することに。

その場に残ったのはお母さんだけ。気配だけする子猫を待ちます。すると、何も音がしなくなったことに安心したのか、子猫がひょっこり出てきました。どうやら車の下に隠れていたようです。

子猫は鳴くのを止め、お母さんを見上げます。この瞬間をお母さんは逃しませんでした。ささっと抱き上げ、そのまま近くのコンビニエンスストアへ。段ボール箱をもらって入れてやり、猫用品を購入しました。

子猫のためにその日できる限りの準備をし、ようやく帰宅です。家で待っていたのは、お父さんと息子さん、上のお姉ちゃん2人。可愛い子猫に子供たちは大喜び。お父さんは難しい顔をしていました。

のちに動物病院で分かるのは、この時生後1カ月ぐらいだといいうこと。家族みんなで「可愛いね」と言い、この晩はそのまま就寝しました。

さて次の日、リビングに家族5人が集まって家族会議です。議題はもちろん子猫の処遇について。お父さん以外の4人は「可愛いから飼いたい」という意見です。でも、お父さんは言いました。

「動物を飼うことは可愛いだけでは済まないよ。悲しいできごとも必ずある」

お母さんと子供たちはハッとしました。それでもお母さんの腕の中ですやすや眠る子猫を見捨てるわけにはいきません。

そこで、家族の約束をしました。お世話はお母さんだけに任せないことと、カーペットとソファーの抜け毛掃除は毎日する。そして、お別れがあることを覚えておく。この3つの約束を守ることで、子猫は家族に迎えられることになりました。

子猫は「こはく」と名づけられ、家族5人から愛されることになります。段ボール箱と袋が好きなこはくちゃん、気付けばこはくちゃんのために家じゅうが段ボール箱と袋だらけです。傘を買った時に入ってきた細長い段ボール箱は、トンネルになってなかなか良いようです。

家族みんながリビングに集まり、自室に行くのは寝る時だけ。今まで以上ににぎやかになりました。

毎日がキラキラとした宝石のよう。それもそのはず、こはくちゃんの名前の由来になった琥珀は宝石です。

琥珀は天然樹脂の化石。その美しさから、古今東西多くの人に愛でられています。昆虫や葉っぱなど様々なものをそのままの形で未来に届ける、タイムカプセルのような宝石なんですよ。

猫との暮らしは、お父さんが言うように悲しいこともあります。しかし、かけがえのない「今」という時間を大切にすれば、それは必ず思い出という宝石になります。

それに琥珀には、幸福を呼び込むパワーもあるのだそう。

呼び込むといえば、こはくちゃんとお母さんが出会った時、お母さんは駐車場に踏み込まず待ちました。結果的にこれが、こはくちゃんを呼び込むことに。

もしかすると、幸福は自分から取りに行くのではなく、呼び込むものなのかも知れません。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)