東京に12日、4度目の緊急事態宣言が出されました。 

五輪・パラリンピックや夏休みを控え、更なる感染拡大を未然に防ぐために、予防的に出された緊急事態宣言、というニュアンスが強いわけですが、飲食店をはじめ、様々な事業者の方や国民の間に、経済的・精神的困難や政府への不信感が高じていることが、深く懸念されます。

そうした中、感染拡大抑制に有用であると考えられるワクチンの『供給不足問題』がクローズアップされていますが、果たして真実はどこにあるのか、データや各所からうかがったお話を基に考えてみたいと思います。なんであれ、状況を正しく分析・把握し、原因を突き止め、解決方法を考えることが、問題解決のためには必要であると考えるからです。

(1)緊急事態宣言は必要? 

7月8日の東京都のモニタリング会議資料によると、7月7日公表時点で、東京都の新規感染報告者数と療養者数(人口10万人当たり)は、31.8人と38.5人で、ステージ4(基準は、25人以上と30人以上)に該当しますが、一方で、病床全体の使用率と重症者用病床使用率は、26.4%と39.6%で、ステージ3(基準は、両方とも50%以上)であり、医療逼迫が問題、と言われてきたことからすると、少なくとも直近の状況が、必ず緊急事態宣言を出さねばならない状況であるか、という点には疑問の余地が無いとはいえない、と思います。

ただし、今後重症者が増え、医療に負荷がかかってくるおそれもあり、特にワクチン接種の進んでいない40〜50代の重症者が増えているといったことや、デルタ株への置き換わりが進んでいること(東京都のデルタ株陽性率は、3.6%(6月中旬)から20.7%(7月上旬)に上昇)なども、注視する必要があります。

日本より感染状況がかなり悪くても、規制の撤廃に舵を切る国もあります。例えば、日本よりも状況のかなり悪い英国(人口100万人当たりで比較すると、新規感染者数は、日14.4人、英429.6人、重症者数は、日3.4人、英6.1人(7月9日時点)。ただし、ワクチン接種率は、日18%、英51%(7月10日時点))では、そうした中でも、公共交通機関でのマスクの着用やイベントの入場人数の制限、飲食店の営業等の新型コロナウイルス対策の規制を、今月19日にほぼ撤廃することが、5日、ジョンソン首相から発表されました。

なお、デルタ株の流行で感染者数が増える中での制限撤廃については、英国内に強い批判もあり、新型コロナに対して『何が正しい方策であるか』は、世界はいまだ模索中です。

飲食店等をはじめとして、倒産・失業・売上減少など、コロナ渦で大変厳しい状況にある方々に対し、「感染拡大を抑えるために必要」ということだけで負荷をかけ続けることが許される状況ではもはやなく、相応の実効性ある公的対応を取る、感染防止策とワクチン接種で正常化の道を早急に探っていく、ということも、論を俟たないだろうと思います。

(2)ワクチン不足についての検証

感染拡大抑制の切り札と言われる『ワクチンの不足』が問題になっています。

7月3日に出演したテレビ番組で、「6月末までに配布した9000万回のうち、約半数が、まだ使用されずに在庫として、全国の医療機関の冷凍庫等にある」と申し上げたところ、反響を頂き、さらに分析と計算(例:各都道府県に配布された量と接種された量から、実際の状況を把握する等)をしてみましたので、説明させていただきたいと思います。

(なお、基本的に、ファイザー製ワクチン(一般接種と医療従事者接種)の供給と接種状況について検討をしており、大規模接種でモデルナ製ワクチンを接種している場合や職域接種については、含んでいない数字です。)

『ワクチン不足』の考えられる理由と解決方法

①データ上は、全国の医療機関等に、約4300万回分の在庫がある。

ファイザー製ワクチンについては、6月末までに、国から自治体に約9000万回分が配布されていて、そのうち、データ上は、約4300万回分がまだ使われていない状況にあります。(全国の医療機関などの冷凍庫に、在庫として入っていると考えられます。)

(解決方法)

→都道府県が調整して、在庫のある市町村から、不足している市町村に移す

 市町村が調整して、在庫のある医療機関から、不足している医療機関に移す。

 各医療機関が融通し合うといったことも一部では行われていますが、やはり、都道府県や市町村など、全体を把握している方が、各所横断的に調整をする、ということが重要になってくると思います。

<算出方法>

・総配布数 91190970回(6月最終週の配送分まで。その次は7月第2週の配送なので、実質的には7月4日時点と考えて差し支えないと思われます。以下同じ。)

一般接種 68341箱×1170回(195バイアル×6回分。以下同じ。)=79958970回

医療従事者  4800箱×1170回=11232000回

・総接種回数 47875635回

一般接種(6月30日時点) 

24855310(1回目)+12055974(2回目)=36911284回

医療従事者(7月2日時点)

5977868(1回目)+4986483(2回目)=10964351回

したがって、データ上は、国から配布された回数分−実際に接種された回数分=91190970回―47875635回=43315335回のファイザー製ワクチンが、まだ接種されずに、全国の医療機関等の冷凍庫にあることになります。

②接種記録のシステム入力にタイムラグがある、あるいは、当該市区町村以外に住民票がある人に接種しても、接種した当該市区町村ではカウントされない、といった理由により、データ上から判断されるより、実際はワクチンが不足している自治体や医療機関がある。

(解決方法)

→前者については入力をできるだけ速やかに行っていただく、後者については、実際に居住する自治体との間で、ワクチンのやり取りをすること等も考えられますが、手間がどれくらいかかるか、といった問題もあると思います。

③国の方針を受け、各所が努力した結果、予想を上回るペースで接種が進み、一部で、供給ペースと接種ペースの間にズレが生じてしまった。

6月下旬の全国の1日当たりの接種回数(一般接種+医療従事者接種)を見ると、1日当たり、おおむね130万回〜180万回の接種が行われています。

国からのファイザー製ワクチンの供給量については、まずは「希望する高齢者に、7月末を念頭に各自治体が2回の接種を終えることができるよう」、一般接種については、4月2841箱、5月36000箱、6月29500箱、7月21600箱で、合計105230970回数分(52615485人分)という予定で組み立てられており、上記①の在庫の話とも関係しますが、よく言われる「予定外に国からの供給が減って、必要な分が足りなくなった」ということが、必ずしも当てはまるわけではないと考えられます。

(解決方法)

→現場の接種ペースを調整していただくということも考えられますが、これについては「待ちわびている市民の方々に申し訳ない」「国が急かすから、無理して接種を早くできるようにしたのに・・」、「接種する医師・看護師等をすでに確保しているのに」といったいろんなご意見がおありだろう、と思いますので、やはり、在庫のある自治体・医療機関から不足している自治体・医療機関への移動というのが、有用な解決策だろうと思います。

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。