1400年前、聖徳太子の時代に創業された日本最古の企業、「金剛組」。神社仏閣を手がける「宮大工」を抱える老舗中の老舗だが、2005年に経営不振に陥り、倒産の危機に陥った。「旧金剛組」は破産、「新金剛組」として生まれ変わり、無事高松建設の傘下となり再建されたが、その渦中にいた宮大工は今どうしているのだろう。

あるとき筆者は「打倒・金剛組」を掲げているOBがいる、という話を耳にした。彼の名は金田優さんという。古巣を「打倒」とは穏やかではないが、その真意を伺ってみた。

金田さんは今、大阪府太子町で「宮大工養成塾」を営んでいる。宮大工を志す若者を募り、月〜金の住み込みや技の習得などを通して、3年かけて一人前に育てる取り組みだ。

住宅を造る大工とは違い、木材のみで建築を手がける宮大工は、今や希少な存在。宮大工や神社仏閣の減少を憂慮している金田さんは、後進の育成に力を注いでいるという。もちろん金田さん自身も、現役の宮大工である。

少年時代から木材やものづくりを愛し、工業高校を卒業した後、金剛組に入社した。しかし入社3年目、金剛組は倒産の危機に。離職する宮大工もいたというが、金田さんはしばらく残った。しかし「もっと上を目指すなら、別の場所の方が君には合っている」という助言を受けて転職。さらに腕を磨き、2014年に独立。「合同会社金田社寺建設」を創業、養成塾もオープンした。 

「弟子から学費を取るなんて…と異質扱いをされました」。オープン当時の周囲の反応を、金田さんはこう振り返る。その理由は、金剛組などで採用されている「徒弟制度」とは全く逆の育成方法だから。徒弟制度において、弟子は給料をもらいながら現場で実践を積んで学ぶものなのだ。 

あえて学費を徴収するスタイルのメリットについて、金田さんの考えはこうだ。

「今、神社仏閣は財源が足りず、建物の修繕がでないなどのケースが増えています。そのため修繕費や建築費を下げて、その分、受講料を充てる。そうすることで、育成だけでなく神社仏閣の再生にも貢献できるんです」

そうして宮大工の養成塾が軌道に乗り始めた頃、金剛組も「養成塾」なるものを始めた。古巣の新しい取り組みに対し、金田さんはこう考えているという。

「コラボしたいと思っています。一度連絡してみたのですが、実は返事がなく…(笑)。なのでこちらはこちらでもっと規模を大きくするために、フランチャイズで他府県にも養成塾を広めていきたい。各地方で宮大工が育つことで、神社仏閣の発展にもつながり、各地の宮大工が手を貸し合うことができて雇用も安定する。そして金剛組と張り合うことができる。まさに“打倒・金剛組”ですね」

金田さんの目標は、維持が難しく、衰退傾向にある神社仏閣の再生だ。「神社仏閣は、神様の住む場所。それだけでなく、人間の精神に満足感やゆとりを与えるために大切な場所だと思っています。それが古くなったり、無くなったりするのは、本当に悲しい。若い宮大工たちと一緒に、率先してどんどん盛り上げていきたいですね」

(まいどなニュース特約・桑田 萌)