日本では男性の育児休業の取得率が伸び悩んでおり、育児休業を希望しても実際に利用できた人は多くないという現状があります。男性の育児休業の取得を妨害したり嫌がらせを行う行為のことを指す「パタハラ(パタニティ・ハラスメント)」という言葉もあるほどです。

今回取材を受けてくれたのは北陸在住のSさん(30代・会社員)です。Sさんは6年前にAさん(30代・会社員)と結婚し、半年前に待望のお子さんが誕生しました。Aさんの妊娠がわかってからAさんと話し合い、夫婦で育児休業を取得することとしました。しかしSさんが職場に育児休業の取得を希望をすると、上司から度重なる嫌がらせを受けることとなったのです。

「あんたは男なのに子どもを産むのか」この一言から嫌がらせが

Sさんの職場ではこれまで男性が育児休業を取得した実績がなかったため、Sさんは早めに上司に育児休業を取得させてほしいと伝えました。すると上司は「あはは。今どきの冗談か?」と言いましたが、Sさんが冗談ではないことを伝えると上司の表情は一変し「あんたは男なのに子どもを産むのか」と強い口調でSさんに迫ってきたのです。Sさんはこの状況からこのまま話を進めてもこじれるだけだと感じ、後日改めて話をする時間を設けてほしいと伝えました。

これまで上司とSさんの関係性は良好でしたが、その翌日から仕事のことで話しかけても無視されたり、理不尽なことを言われることが多くなりました。それでもSさんはこれまで通り、仕事をこなしていたのです。

「戻る場所はない」と言われて悩む日々

育児休業の申し出をしてから1カ月ほどが経過し、その後進展がなかったことからSさんは再度上司に育児休業について話をしました。上司からは「しつこいな。まだそんなことを思っていたのか」「もし育児休業を取得してもその後、自分がいまの部署に戻れるとは限らない」「自分たちとは価値感が違い過ぎて自分勝手なことをするなら一緒に働くことはできない」「県外への転勤の時期も近いかもしれないな」などと言われたのです。

Sさんはいまの職場を辞めたいと考えたことはありません。むしろいまの職場が好きでした。しかし今後のことを考えると、育児休業を取得すべきかどうか悩みはじめたのです。

人事部からも取得を後押ししてもらえず

その後もSさんは悩み続けました。Sさんは職場の人事部に相談に行きましたが、取得を後押ししてくれるような言葉をもらうことはできませんでした。結果、Sさんは育児休暇を取得しないことを余儀なくされたのです。いま自宅には生後6カ月のお子さんがいます。育児休業を取ることができなかった分、残業はなるべくしないように心がけAさんとともに育児を楽しみながら、Aさんの負担が軽くなるようサポートをしています。

   ◇   ◇

今回の取材を通してSさんは「自分は結局、あきらめてしまいました。きっと気の弱い人だと思われるかもしれません。しかしこれがいまの男性の育児休業の実態だと思うんです」と話してくれました。男性の育児休業を国が促進していても、地元の中小企業などでは導入が難しいという現状があることを認識して、今後は誰もが希望すれば育児休業やその他の制度を利用することができるような整備が必要なのではないかと強く感じました。

(まいどなニュース特約・長岡 杏果)