教育現場でタブレット導入が進められている。「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏はその問題点として「いじめの道具化」と「通信料の家庭負担」を指摘し、「文部科学省は、タブレット配布の再考を」と訴えた。実際に「夜回り」を通して、コンビニエンスストアの無料Wi-Fiを使って宿題をする子どもたちと接した水谷氏は「本末転倒」となっている現実にもの申した。

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 東京都町田市で、昨年11月、小学校6年生の女子児童が、いじめを訴える遺書を残して自ら命を絶ちました。両親は、今文部科学省が、全国の小中学生にその使用を広げようとしているタブレット端末のチャットでのいじめが、その一因となった可能性があると訴えています。

 私は、以前から、小中学生にタブレットを配布し、教科書の電子化、リモート授業や教員、友人とのコミュニケーションや情報伝達の手段として、タブレットを拙速に普及させることには異議がありました。

 一つは、文部科学省が、一般の汎用タブレットを児童生徒に配布していることにあります。汎用タブレットの場合、その通信制限には限界があり、危険なサイトへ入ることもあり、また自由にSNSを使用することで、今回のようにいじめなどの道具として使われる危険性があるからです。また、私は、公立学校の教員でしたから、学校現場で、いかにネットリテラシーやネットマナー、その危険性についての教育がおろそかになっているかは知っています。このような状況で、汎用タブレットを児童生徒に配布することは、きつい言い方かもしれませんが、子どもに剣や拳銃を持たせることと同じだと考えています。一部の学習塾が配っているタブレットのように、リモート授業やデジタルテキスト、管理者がすべて確認できるSNSの使用に特化したものであれば、この問題は起きなかったでしょう。

 もう一つには、通信料の問題があります。現在の日本でも、すべての家庭が、文部科学省の役人の家庭のように通信ネットワークを構築できているわけではありません。タブレットを無償で渡され、通信用のルーターを貸与されたとしても、通信料については、生活保護世帯や就学保護世帯の場合は、それを保護してもらえますが、その他の家庭では、自分で支払わなくてはなりません。

 先日、私は、地方の町で「夜回り」をしました。夜の11時過ぎ、町で1軒のコンビニの駐車場には、十数人の小学生や中学生が座り込んで、携帯やタブレットをいじっていました。彼らの半分はゲームをしていましたが、残りの子どもたちは、学校の宿題や課題をタブレットでやっていました。彼らの話を聞くと、通信料の家庭への負担が大きく、コンビニならば、無料Wifiがあるため、そこで勉強をしているということでした。

 文部科学省が、拙速に、しかも準備不足の中で進めているタブレットの配布が、こんな危険な状況に子どもたちを追い込んでいます。本末転倒です。

 文部科学省には、一度タブレット配布を中止し、この1年半の中で発生した問題をすべて調査し、それを解決した上で再度進めて欲しいと願います。このままでは、また大変な問題が起きてしまいます。