ネットのゲームサイトで交流した18歳の若者に誹謗中傷され、訴訟で和解した男性がいる。名前や住所、電話番号、顔写真などの個人情報を流出させられ、「人殺し」などと嘘を書き込まれた。一時はうつ病で仕事もできなくなったが、訴訟で得られた和解金は55万円。裁判に掛かった70万円を差し引くと赤字だ。それでも男性は「裁判をやってよかった」という。

■発端はカードゲームサイト

 男性が誹謗中傷の被害に遭ったのは、2020年10月。カードゲームサイトでの交流がきっかけだ。カードの使い方を巡ってトラブルになり、チャットを通じて「バーカ」「頭悪い、死ね」などと送られてきた。相手をなだめても陰湿なメッセージが続いたため、サイトの管理人に連絡。若者のアカウントを凍結してもらった。

 だが、ネット掲示板やツイッターで嫌がらせがエスカレートしていく。もともとツイッターのプロフィール欄に、あだ名と出身地を公開していた男性。ツイートの返信などから氏名を割り出された。親が自営業で、地元の新聞社が取り上げたローカルニュースで取り上げられたこともあり、検索されて実家の住所や電話番号もばれていったという。ネット上には「〇〇は子どもを誘拐して拉致して拷問して殺害しました」などスレッドを立てては書き込まれ、顔写真や氏名、家族の情報までさらされた。

 日に日に増えるうその書き込みに「家族にも迷惑が掛かるし、何とかしないと…とそればかりだった」と男性。個人情報を消さなければという気持ちで焦り、仕事も手が付かないように。21年3月にはうつ病と診断された。診断書には「インターネット上のトラブルが大きな要因と考えられる」と書かれている。

■発信者情報は3〜6カ月で消える

 最初は警察に相談に行ったが「相手がどこの誰だか分からない以上は何もできない」「民事不介入」の一点張り。次の法テラスでは、誹謗中傷した相手を特定するのが大事だと教わった。しかし、ようやく依頼できた弁護士も「見積もり書を送ってもらえなかったり、客単価を露骨に上げようとしてきたりして、時間だけが過ぎていった」という。そうしているうちに半年以上が経過。証拠の特定は21年9月。中身も薄く、数件しかなかった。訴訟はほかの弁護士に頼むように言われたという。

 親身になってくれる弁護士に出会えた時には、もう遅かった。投稿は、ネット回線事業者(プロバイダ)を通じて3〜6カ月保存される。だが、期間を過ぎると発信者情報などのデータが消されていく。男性が信頼できる弁護士に依頼した時には発信者情報などが消えており、「誰が発信情報したのか」が特定できない状況になっていた。

■電話番号を人に教えるのが怖く、取材は非通知で

 裁判は今年6月に和解。弁護士の話では、誹謗中傷による被害が全て認められれば約120万円は受け取れたという。しかし証拠が少なく55万円だった。男性によると、今でも悪質な書き込みは多く残っており、見ると気分が悪くなる。また電話番号を人に教えることが怖いといい、取材も非通知で受けてもらった。

 お金も時間も体力も使い、赤字になった裁判。それでも男性は「やってよかった」と強調する。和解最終日に加害者の若者に会うと、頭を坊主にしていた。謝罪はなかったが「人をばかにすることを少しは反省したんじゃないですか。相手にお咎めだけでもできたので」

 男性は被害をブログサービス「note」で公開。誹謗中傷を受けた経緯から裁判でやるべきことなどを時系列で紹介している。

(まいどなニュース・山脇 未菜美)