現職の横浜市長、閣僚、前神奈川県知事、教授に市議、元国会議員、作家など最多の10名が立候補を予定している横浜市長選挙(8月22日投開票)。泡沫候補多数ではなく、それなりの候補者が大乱立する異常事態である一方、肝心の争点と言われるカジノについてはほとんどの候補が反対で、争点は良くわからない。そんなカオスな横浜市長選が再選挙になる可能性が急浮上している。

公職選挙法では、当選の条件として法定得票数の確保が必須となっている。横浜市長選の場合、有効投票の4分の1を超えた候補がいないと当選者なし、再選挙になる。当選者の得票があまりに少ないと全体の代表としてはふさわしくないという考えから出来た制度で、法定得票数は選挙によって異なり、国政選挙は6分の1、地方議員は有効投票数/定数×4分の1というルールになっている。かつて、首長選挙の法定得票数が8分の3以上という時期が戦後あったが、当時、500に上る自治体で当選者なしという選挙が続出し、その後4分の1に緩和されたが、それでも法定得票数のハードルが高い首長選挙や議員の補欠選挙において、ごく稀にこうしたことが起きる。

直近では2017年の市川市長選(千葉県)だが、自治体規模や候補者の顔ぶれをみると2003年の札幌市長選挙における再選挙にかなり似た形相を呈している。

2003年の札幌市長選挙の場合、民主系の上田候補が17万、元参院議員の中尾候補が16万、自民党の道見市議15万と3者が競り合い、その他4候補が9万、7万、6万、5万と主力候補の票を削り、結局トップの上田候補も法定得票数に届かなかった。しかも、市民はだれに投票していいかわからず普段の3倍近い5万票に上る無効票が発生した。結局、再選挙となり、自民党は候補を差し替え現職の石崎衆院議員を投入し25万票を獲得するが、リベラル系を手堅くまとめた上田候補が28万票を獲得し勝利を収めている。

その上で、今回の構図を見て頂くといかに酷似した状況かお分かり頂けると思う。

唯一のIR推進派にして圧倒的な現職市長の強みを生かせる林文子氏、既に大半の自民市議団をまとめる前国家公安委員長で自民党県連会長の小此木八郎氏、「ハマのドン」の異名をもつ藤木幸夫氏や共産党も共闘を表明した立憲民主党が擁立する元横浜市立大教授の山中武春氏、そして知名度抜群の元神奈川県知事で参院議員の松沢成文氏の主要4候補に加え、弁護士の郷原信郎氏、元長野県知事の田中康夫氏、横浜市議の太田正孝氏、水産会社社長の坪倉良和氏、元衆院議員の福田峰之氏、動物愛護団体代表理事の藤村晃子氏の6候補が票を取り合う大混戦に突入する。肝心の争点であるIRも総反対で争点もボケはじめる中、新たな候補が名乗りを挙げるのか、また出馬取りやめはあるのか。

告示日(8月8日)まで2週間余り、今後の展開に注目が集まる。

◆村山 祥栄(むらやま・しょうえい)前京都市会議員、大正大学客員教授。1978年京都市生まれ。専修大学在学中は松沢成文氏の秘書を務める。リクルートを経て京都市議に。2010年、京都党を発足。2020年2月の京都市長選で出馬も惜敗。現在は大正大学客員教授。