新型コロナウイルスの感染が急拡大し、開催中止や延期を求める世論が根強くある中で、東京五輪は23日に開会式を迎える。今秋、衆議院の解散総選挙を控える政権にとっては、五輪開催に伴う想定外のマイナス要因も重なり、予断を許せない状況が続く。注目される今秋の解散総選挙について、ジャーナリストの須田慎一郎氏は当サイトの取材に対し、衆議院議員の任期満了ギリギリとなる「10月21日解散」を予想するなど、五輪後の政局を分析した。

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 東京五輪を前に、今、官邸の中で究極のウルトラCとして「10月21日解散」が浮上している。これは衆議院議員の任期満了日で、最後の最後まで時間を稼きたいということになる。憲法違反にはならないが、通常ならあり得ない選挙スケジュールだ。なぜこうなるのかというと、この秋の解散総選挙から逆算して計算されてきたことが全て裏目になっているからだ。

 東京五輪・パラリンピックには反対論もあったが、いったん開幕してしまえば、ポジティブにとらえられ、国民が熱狂することで成功するだろう…。そして、パラリンピックの閉幕が9月5日なので、その直後に臨時国会を召集して補正予算を成立させ、9月中旬以降には解散総選挙の動きとなり、10月中旬までには投開票…という流れが想定されていた。10月末にG20首脳会議があるので、その前に日程的な余裕を持って総裁選、首相指名が行われ、再選も含めて、次の総理大臣を送り出すという見通しになっていた。その間、ワクチン接種も進み、コロナ感染も抑えられているはずだった。

 だが、ワクチン接種は進んでおらず、感染者がさらに急増するなど、官邸の想定とは真逆になっている。五輪開幕直前には開会式の音楽担当だった小山田圭吾氏の問題が出てくるなど、予想していなかったケチも付いてしまった。こうした事態を変える突破口が出て来るまで、時間的な猶予が必要となり、10月21日の任期満了まで粘らねばならないほど、菅政権は追い詰められている。

 前回、安倍政権での選挙では勝ちすぎていた。今回、20議席減くらいに収まれば、勝ったと言える。それが40議席くらいも減らすことになれば、自公が過半数を切ることがなくても責任問題になってくる。

 今の内閣支持率を見ても、菅再選の基盤は党内で揺らいでいるが、一方で「ポスト菅」が不在という現実もある。菅さんは党内で派閥を率いているわけではないので、前回の総裁選はいち早く二階派の支持を付け、安倍氏のいる細田派、麻生派も雪崩をうって圧勝した。だが、今は二階氏と安倍&麻生連合の間がぎくしゃくしている。

 つまり、今秋の大ポイントは、自民党の総裁が誰になるかではなく、主導権を握るのが二階氏か、安倍&麻生連合になるか?ということになる。血みどろの権力闘争は既に勃発しており、それが現れたのが山口3区。二階派で現職の河村元官房長官と、参議院議員の林元文科相(岸田派)が立候補する意向を示し、自民党の分裂選挙になる可能性が出ている。

 菅さんは今後もリーダーシップを発揮しないでいると、党内基盤を沈下させることになるが、ポスト菅がいないことから自民党総裁に再選されれば、首相続投となる。その瞬間、政権はレームダックとなり、求心力のない「弱い内閣」となるだろう。任期3年を全うできるかという問題も出て来る。

 小池都知事の自民党復党という話が出て来るのも、そこに理由がある。小池氏がポスト菅として、二階氏のカードとなるのか、安倍&麻生連合はどう出るか。人気のある河野氏は麻生派だが、麻生氏は「河野は推さない」と明言している。

 経済活動の再開は「アフター・コロナ」に入らなければ見えてこない。緊急事態宣言については「今回が最後」という声が官邸サイドから出ている。いくら宣言を出しても平常運転になってしまっているからだ。それに代わるものがどのような名称になるのかはともかく、アフター・コロナにならなければ、経済再開は見込めない。この先がまだ見えないまま、五輪は開幕する。

(経済ジャーナリスト・須田 慎一郎)