全国各地で高校野球の独自大会が開催されている中、底辺を担う少年野球界でいま問題になっているのが保護者の負担となる“お茶当番”だ。野球離れの原因のひとつとされ、現在はMLBのタンパベイ・レイズで活躍する筒香嘉智外野手(28)も廃止を提言したほど。そこで”お茶当番なし”を売りに結成2年となる「品川ボーイズ」のその後を追跡してみた。

 コロナ自粛が解除された6月1日から都内の少年野球チームも活発に動き出した。週末の朝の多摩川河川敷。あちらこちらで野球少年の元気のいい声が響き、保護者の姿もちらほら目につく。

 そんな中で監督と選手たちだけで活動するチームがあった。品川ボーイズだ。昨年、東日本ブロック東京都東支部に加盟し部員11人でスタート。そのスタッフの1人Kさんが言う。

 「子どもたちが率先して好きな野球に取り組むのが本来の姿でしょう。親に強制されたり、管理された組織では伸び伸びと育ちません。その弊害のひとつがお茶当番制。わたしたちは保護者がいなくても野球が楽しくできる環境を目指し、取り組んでいます」

 お茶当番がないことは特に母親には評判がいいようでスタッフの協力を得てアンケートを採ってみると、こんな答えが返って来た。

 母親Aさんは「私は美容関係の仕事をしているので土、日は冠婚葬祭などで朝早くからお客さまが来る。当番制がないのは助かります」と話す。

 また母親Bさんは「以前のチームは時間とお金に余裕があるお母さんたちと比較され、嫌な思いをしました。自家用車での送り迎えやたくさんの弁当を作ったり。できることとできないことがあります。それで、いまのチームに移りました」と言う。

 さらに、父親Cさんは「一番困るのはボスママがいて、監督やコーチ以上にチームに口出しすること。お茶当番をするだけならまだしも、いろいろと指図されると…ね」と打ち明けてくれた。

 もちろん、違う意見もある。他チームの役員の協力を得て、ある母親に取材してみると「自分の子どもを指導してくださる監督、コーチにお茶くらい用意するのは親として当たり前ではないでしょうか。子どもの成長過程を見届け、どのような指導をされているかを確認する意味で親が交代で見守ることは理想であり、親としての義務」との答えが返って来た。

 また別の母親は「いまの子どもたちはひ弱だから熱中症などで、すぐに倒れたりします。そうした基本的健康管理においては親が側にいて守ってあげないといけないと思う。親が現場に行くことは大切。親同士のコミュニケーションの場ともなり、プラス面もある」と言う。

 確かに、保護者が見守ることの良さもあるだろう。ただし、これが行きすぎると様々な弊害を生む。かつてお隣の目黒区で野村克也夫人のサッチーこと沙知代さんが指揮を執っていた「港東ムース」では、お茶当番は強制的。子どもの弁当が冷凍食品だと親を呼び出して説教が始まるなど理不尽なことは日常茶飯事だった。亡くなられた方に失礼と思いつつ、私が取材した実例としてサッチーは「ふざけんじゃないわよ。あなたはこっちの高校に行きなさい」と進路にまで口出ししていた。悲しいかな、いまでも少年野球界にはこのような状況が内在しているのではないだろうか。

 高知高の岡本道雄元監督(74)は「いまではお茶当番ぐらいはいいのではないかと思うぐらい当たり前になりましたね。この件で問題になるのは親の介入。高校野球でも寄付をしたから甲子園メンバーに選ぶ際に忖度してほしいとなると、おかしくなる。まぁ、私たちの時代では親が練習を見に来ること自体なかったです。大切なのは距離感でしょう」と話してくれた。

 ここで品川ボーイズの現況に触れると、2019年に筒香嘉智がお茶当番制の廃止を提言したことも“追い風”となったようで、現在部員は27人にまで増えているという。「ネットや口コミで“お茶当番廃止のチーム”として知られているようです。お茶当番がなくても選手同士で協力し合い、やっていけてます」とスタッフは手応えを口にした。

 野球が好きな子どもが集まり、自主性を持って取り組む。そして監督の指導を受け、上達し、さらに野球が好きになる。個人的に品川ボーイズの取り組みは素晴らしいことだと思う。野球の未来は暗くない。

(まいどなニュース特約・吉見 健明)