ギブアップにはまだ早い―。京都の二つの学生プロレス団体が、新型コロナウイルス禍によるピンチからの巻き返しに闘志を燃やしている。約40年にわたって観客を沸かせ、有名レスラーやお笑い芸人も輩出してきたが、活動制限の影響で、ともに数十人いた部員は1桁に。それでも選手たちは感染対策に気を配りながら練習を積み重ね、起死回生を懸けてリングに立つ。

 8月中旬。大阪市生野区の練習場にいたのは、立命館大の「立命館プロレス同好会」(RWF)と同志社大の「同志社プロレス同盟」(DWA)の部員たち。真剣な表情で、前転しながらの受け身やロープの反動を使ったラリアット、ドロップキックを練習していた。4時間もの間、体をマットに打ち付ける音がやむことはなかった。

 学生プロレスは、真っ向勝負にお笑いの要素も織り交ぜているのが特徴。学生による試合実況では、技の解説に加え、選手の人となりや「あの選手は失恋したばかりなんです」などといった裏話も披露され、プロレスに詳しくない人でも楽しめる。

 新日本プロレスや全日本プロレスで茶の間が沸いた1970〜80年代、全国の大学で学生プロレス設立が相次いだ。その流れを受け、DWAは1978年、RWFも1985年に誕生した。

 両団体は合同で練習し、年間で10回前後の無料の試合イベントを学園祭などで開催。リングの周りには毎回数百人以上が集まった。RWFのOBには、新日本プロレスの人気プロレスラー棚橋弘至さんやお笑い芸人のレイザーラモンRGさん、DWAにはレイザーラモンHGさんがいる。両団体が争う「京都統一ヘビー級選手権」では、王座に輝いた棚橋さんがHGさんらと防衛戦を繰り広げた。

 しかし、両団体はコロナ禍で2020年に活動休止を余儀なくされ、翌年3月に開催した引退試合は無観客にした。その後は数回、予約制のイベントを開催したが、集まったのはOBやコアなファン十数人のみ。幅広い層の観客が集まる従来の形とはほど遠かった。

 新入部員の勧誘もリングを使ったアピールができずに停滞。RWFはピーク時に選手が数十人いたが、20年に入部したのはプロレスファンだったRWF現会長の3年梅本航成さん(20)だけで、現在は5人のみ。DWAは選手が1人となり、会長の2年石井海翔さん(20)は「タッグマッチも組めなくなってしまった」と危機感を募らせる。

 練習場所だった同志社大の施設は改修で使えなくなり、大阪を拠点に活動する団体「プロレスリング紫焰(しえん)」の練習会場を昨夏から借りている。元々町工場だった練習場の室温は、夏場は37度を超える。感染対策として一部の練習を除きマスクを着用しており、部員たちは息苦しさとも闘いながら汗を流してきた。

 学生たちが、これほどまでにプロレスに打ち込むのは、自己表現の場としての思い入れが深いからのようだ。

 練習や試合では宙を舞ったり、全身タイツで駆け回ったりするが、ひとたびリングを降りるとおとなしい部員が多いという。梅本さんはコロナ禍以降、オンライン授業の導入などで友人を作るのにも苦労したが、「プロレスは非日常の世界。自分自身を表現できる貴重な時間だと思えるからこそ、全力を尽くすことができる」と話す。

 「京都は学生プロレスの灯を絶やさないで」と願うのは、紫焰代表の佐原英司さん(43)。出身の大阪学院大のプロレス研究会は昨春、部員がゼロになり活動を休止した。学生プロレスの意義について、「ユニークな解説や学生らしいノリなど自由な楽しませ方で、プロレス界全体を盛り上げてきた」と強調する。

(まいどなニュース/京都新聞)