「他人から意見されても凹まない方」求む−。そんなユニークすぎる求人募集が話題を呼んでいる。求人を出しているのは京都の嵐山に新しくオープンした美術館。学芸員の募集で求めるスキルの一つとして挙げられている。美術館の学芸員といえば、展示を企画したり、学術的な研究に取り組んだりと、どちらかと言えば学究肌の「静」のイメージが強いのだが。この条件に秘められた真意とは。

 美術館は今年10月に開館した「福田美術館」。消費者金融大手アイフル創業者の収集品を紹介するため、建てられた。観光客でにぎわう渡月橋のすぐ近くにあり、狩野派から琳派、円山四条派から京都画壇と連なる京都ゆかりの名品約1500点を収蔵している。

 求人募集は12月16日に美術館のホームページに掲載された。「経験豊かな学芸員」を求め、「とにかく気さくで楽しい運営チームが、皆様のご応募をお待ちしております」と記す。

 職務として「嵐山における博物館施設の管理運営、展示、普及活動」「所蔵品の調査、管理」「学術研究」の三つの柱を挙げた上で、「求める経験・スキル」として9項目が並ぶ。その最後が「明るく元気で、他人から意見されても凹まない方」となっている。一般的な学芸員像とはやや異なる条件はツイッター上でも話題になり、「ここまで色々丁寧に書いてある学芸員募集のお知らせ、珍しいような」といった声が見られた。

 斬新にも映る学芸員の条件には、どのような意図が込められているのだろう。

 「100年続く美術館を目指しています。それには、時に従来の美術館像を打ち破っていく必要があると考えています」。岡田秀之学芸課長はそう切り出すと、続けてこう説明した。

 「そのために、学芸員だけでなく、スタッフ全員で考え、さまざまな意見を出し合っていかなければならない。場合によっては出した意見が全否定されることもあるかもしれません」

 「そんな時に、落ち込んで沈んだままでいるのではなく、すぐに立て直して、『それなら、こんな案はどうでしょう』と新しいアイデアを提案するぐらいの姿勢がほしい。そんな意味で『凹まない』という表現を使わせていただきました」

 なるほど。京都は公立だけでなく、私設の美術館も多い。そんな厳しい環境で個性を発揮して生き残っていくために求める学芸員像。それが「凹まない」の真意だった。普通ならば求人広告でわざわざ明記しない条件かもしれないが、雇用側が描く人物像は、こうして具体的に打ち出してくれた方が応募する側も分かりやすいだろう。

 せっかく考えた企画案がけちょんけちょんに否定されたり、少々笑われたりしても、めげない、へこたれない。いい意味での鈍感さで前を向く姿勢は、学芸員の世界のみならず、現代を生き抜く上で大きな武器になるかもしれない。

(まいどなニュース/京都新聞・樺山 聡)