タクシー乗り場の行列に並んでいて、やっと自分に順番が回ってきたとき、ふと待機中の車列に目をやると、なかなか洒落た感じのレトロタイプのタクシーがいた。「かわいい、あれに乗ってみたい」と思ったとき、自分の前にいるタクシーをスルーしていいのだろうか。

…そんな疑問が当サイトに寄せられた。確かに、来た順に乗らなければいけないというルールは聞いたことがないけれど、マナー違反にならないか? 運転手さんに怒られないかな? いろんな思いが脳裏をよぎる。このようなとき、どうすればいいのだろうか。一般社団法人全国個人タクシー協会業務部に聞いてみた。

「公式見解ではありませんが―」と前置きがあって、「結論からいうと、タクシー乗り場における乗車の順番については、法律等で特に規定はありません。慣習として、並んでおられる順にお乗せいたします」

ルールはないということなら、後から来るタクシーに乗ることは何の問題もないというわけか。

「お客様の中には車輛を選びたい方もいらっしゃいます。タクシーチケットをもっていて、乗車できるタクシーが決まっていたら、基本的には後ろに並んでいるお客様を先に乗せて、チケットで乗れるタクシーが来るまで待つことが一般的です」

なるほど、タクシーを選びたい理由は、それぞれあるということだ。

「ですから、後ろにいるレトロなタクシーに乗りたいという理由のほかにも、順番がまわってきたタクシーが偶然にも過去にトラブルになった運転手だった、あるいは直感的に乗りたくないと感じた場合でも同様になるのではないかと思います」

必ずしも来た順に乗らなくても差し支えないことは理解できたが、運転手の立場からはどうだろうか。たまたまタクシーチケットが使えないタクシーにあたって、「チケットを使えるタクシーに乗りますから」と断るのは納得してくれるだろう。だが、「あっちのレトロタイプのタクシーに乗りたいからパス」といわれた運転手は、あんまり愉快な気分にならないはず。傷つけてしまったら気の毒だし、角が立たない上手い断り方はないものか。

「一概にはいえないと思いますが、理由しだいで応じてもらえる場合、そうでない場合あると思います」

やっぱり、そうなのか。

「タクシー運転手が傷つくことはないと思いますが、後ろに乗客が誰も並んでいないときに、何も断らず後ろのタクシーに乗車すると怪訝な顔をする運転手はいると思われます。せめて一言かけるか、乗りたいタクシーの運転手に事情を話して、その運転手から伝えてもらうなどしていただければありがたいと思います」

つまり、後ろに並んでいる人がいるときは順番を譲ればいいし、自分しかいないときは運転手に一言断ればいいということだ。

   ◇   ◇

余談ながら「タクシーを気持ちよく利用するコツのようなものはありますか」と尋ねてみた。

「タクシーは公共交通機関の中で唯一、乗客と運転手が狭い空間の中で同じときを過ごし、会話もします。その際に行き違いが生じてしまい、クレームになることもあります。が、お互いに相手を人として尊重すれば、気持ちよく乗車できるのではないかと思います」

せっかくお金を払って乗るのだから、気持ちよく利用したい。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)