アニメ「鬼滅の刃(きめつのやいば)」が大人気を博しています。配信サービスに加えブルーレイやDVDの発売も始まり、その勢いはとどまるところを知りません。そんな「鬼滅の刃」のとても重要なシーンに、独特の筆文字が登場するのはご存じでしょうか。その筆文字は84歳の老書家が書いた文字を基にしています。アニメの空気感を支える、文字の秘密を書家の家族に聞きました。

 「鬼滅の刃」は大正時代を舞台にしたアニメです。人を食べる鬼を討つ「鬼殺隊(きさつたい)」に入った少年、竈門炭治郎(かまどたんじろう)の成長を描く物語です。

 アニメの終盤、炭治郎は「柱」と呼ばれる鬼殺隊の幹部たちに面会します。アニメのシーンでは、各「柱」の名前が筆文字でドーンと表示されます。その文字、実はかなり珍しいフォントが使われています。

 フォントの種類は「陽炎(かげろう)書体」と「闘龍書体」「黒龍書体」。いずれも書家・坂口綱紀さん(84)が書いた文字を基に製作した書体です。

 綱紀さんの家族が営むフォント制作販売会社、昭和書体(鹿児島県・さつま町)によると、陽炎書体は豪快さが売りのフォントで、店舗の看板によく使われるそうです。一方、闘龍書体は力強さとともに、かすれがあるのが特徴で、本の題字に使われることが多いといいます。黒龍書体は緩急とダイナミックさを兼ね備えた文字だそうです。

 昭和書体のフォントは、おにぎりや日本酒といった食品をはじめ、ゲーム「真・三國無双5」やドラマ「陸王」などエンターテインメント業界でも使用される頻度が高まっているといいます。

 アニメ「鬼滅の刃」で使われていることを知らせてくれたのは、綱紀さんの孫・太樹さん(35)の知人でした。太樹さんらがアニメ「鬼滅の刃」に採用されたこと、そして「鬼滅の刃」が超人気アニメだと綱紀さんに説明すると、「すごいなあ、うれしいなあ」と話したそうです。「自分の書いた文字が一人歩きしている現状を知ってキョトンとしている感じだった」とのこと。

 綱紀さんは日々、ご飯を食べるか、テレビを見るか、字を書くかというような生活を送っているといいます。現在はさらなる書体を生み出すため毎日100字ほどを書き続けており、「90歳まで書く」と意気込んでいるそうです。

 アニメ以外にも気になる筆文字を見つけたら、それは鹿児島の老書家が精魂込めた字を基にした書体かもしれません。

(まいどなニュース/京都新聞・浅井 佳穂)