行ったことのない場所でも、たとえ地球の裏側でも、ネットさえあれば簡単に地図を調べられる便利な時代。ですが、距離だけでなく200年近い時空まで飛び越えてしまったグーグルマップ風地図が話題です。記されているのは日本が世界に誇る浮世絵師、葛飾北斎や歌川広重らが生きた江戸後期、1820〜40年ごろの関東地方一円。一見、現代と同じように見えて、実は街道や関所、宿場も古地図などの史料に基づいて記され、荒川などの川筋や今はもうない湖沼、広い広い東京湾も当時のまま。江戸の人々の息遣いまで伝わってくるような完成度に「ずっと眺めていたいほど」と称賛の声が寄せられています。

 制作したのは、地図とかデザインとか(@chizutodesign)さん。古地図でなく、あえてグーグルマップ風にしたことについて「昔のものを、慣れ親しんでいる現代風のフォーマットで表現するとどうなるか、というのをやってみたかったから」と話します。

 制作にあたっては、江戸時代の絵図や伊能図に描かれた街道のルートを、明治初期の古地図や様々な文献や論文を参考に推定。さらに絵図に描かれた地名、関所・番所、湊、寺社や山岳信仰のあった山などを載せていく―という…なんとも途方もない作業です。

 昨年3月に首都圏版をツイートしたところ、3.8万いいねを集める一方で「のちに何度も改修が重ねられていた荒川の川筋を始め、参考資料など様々なご指摘やアドバイスを頂いた」。そうした部分の見直し・改善をし、北関東と静岡、山梨の一部も新たに加え、約半年をかけて制作したのが今回の地図。5月29日にツイートしたところ、これまでに2.2万いいねが寄せられ「ここまで反響を頂けたのも皆さんのおかげ」と話します。

 その上で「苦労した点は、街道のルートです。描くのにとにかく時間がかかりました。また、当時のその街道がなんと呼ばれていたのか調べるのにも時間をかけました。また、海岸線や湖沼を出来る限り当時のものを忠実に再現しようとこだわりました。地図を見た時、おそらく一番初めに現代との違いを意識できそうな部分だと思ったので…」と話します。

 そんな@chizutodesignさんが地図の魅力にハマったのは、小学生のころ。「自分でもよくわからないのですが、地図は、そこに暮らす人々の生きざまの記録なのだと思うんです。最新の地図も、時が経てばいずれ『古地図』になってしまう。今の一瞬を切り取った地図というものに、心を惹かれているのかもしれません」

 ちなみに今回、江戸後期を選んだのは「絵図や文献等が数多く残っており、身分を問わず多くの人が旅行や参詣等で往来をしていた時代だから」。「時代としてのわかりやすさや人気度、日本史から見ればそこまで昔ではないものの現代とは大きく社会が異なっていたのもチョイスした要因かもしれません」といい、今後は「江戸時代の地図を日本全国完成させたいのと、さらに他の時代(戦国や鎌倉、平安、奈良など…)も制作したいです」と意気込みます。

 さぞかし歴史好きかと思いきや、意外にも「学生時代は日本史があまり得意ではなかった」とか。でもこの地図と一緒にタイムスリップ気分で見たら、ちょっと違った楽しさが生まれそうですね。

(まいどなニュース・広畑 千春)