おかやまフォレストパークドイツの森(岡山県赤磐市仁堀中)にお目見えした「アルプスの少女ハイジ公認ブランコ」が人気だ。開園25周年のリニューアルの目玉として3月に登場。新型コロナウイルスの影響で来場者数は苦戦が続くが、ブランコには週末を中心に体験希望の長い列ができている。ホームページや案内看板などもハイジの世界を全面的に押し出したスタイルに一新した。しかし、「アルプスの少女ハイジ」の舞台はスイス。どうしてドイツの森がPR役に起用したのだろうか。現地を取材した。

 ♪口笛はなぜ、遠くまで聞こえるの−。アニメのオープニングソングを合図にブランコがゆらゆらと揺れ、親子の歓声が響いた。新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言が全面解除された5月下旬の週末、ブランコ前には順番待ちの長い列ができた。「多い日だと約200人が楽しんでいます。いまや一番人気のアトラクションですよ」と広報担当の柳生光昭課長は胸を張る。

 ブランコは園内を一望できる高台に設置。高さは10メートル。鉄骨製フレームからワイヤを垂らしている。定員は大人一人までだが、親子なら同乗可能。スタッフに押してもらいながらの1分半の体験では、花畑の上を飛んでいるような爽快感が味わえる。大自然をバックに登場する主人公・ハイジのような姿を写真に収めることもできる。

 ドイツの森は「1年中花が楽しめる」をコンセプトに園内を改装。花畑を2倍の7千平方メートルに拡充した。「リニューアルをアピールするなら面白いものがいい。これまでと違う視点で花が楽しむならブランコ、それならハイジだろうという話になった」と柳生課長。ドイツとの関係性を尋ねると「ドイツにもアルプスはある。それにハイジの友人クララはフランクフルト出身で、関係はありますよ」と笑いながら続けた。

 利用を打診した版権元の瑞鷹も「自然豊かな施設でハイジの世界が楽しめる」とキャラクターの使用とブランコの設置を快諾。「日本初の公認ブランコ」も取り付けた。リニューアルに合わせ赤磐市内の案内看板やホームページ、パンフレットにも花いっぱいのドイツの森でブランコを楽しむハイジの姿が描かれた。

 テレビ放送から46年たってもハイジは人気キャラクターだ。アニメは1974年、52話を放送。岡山市出身の高畑勲監督が演出を手掛けた。美しい大自然の中で繰り広げられたハイジと仲間たちの物語は多くの人の感動を呼び、平均視聴率は20%を超えたという。その勢いは今も衰えず、アニメが再放送されたり、テレビCMに登場したりしている。ハイジの公式ショップやテーマパークも全国で8カ所営業しているほか、各地でグッズ販売イベントも行われている。

 ハイジの公式ホームページやグッズ販売を手掛けるサンクリエート(東京)は「日本初の海外ロケを行った“大河アニメーション”とも言える作品。登場人物の生活や心情を丁寧に描いているからこそ、世代を超えて愛されているのではないか」と話す。

 ドイツの森も来園者増を託した形だが、評判は上々だ。妻と子ども2人で備前市から来た会社員男性(36)は「子どもたちはなじみがないかもしれないが、私たち以上の世代には懐かしく感じるのでは。来る楽しみが増えた」と笑顔を見せ、家族4人で訪れた公務員女性(37)=早島町=は「子どもの時に見た夢のブランコに、子どもと一緒に乗れるなんて」と少し興奮気味に語った。シニア世代も「アニメを思い出す」と体験することも多いという。

 来場者の低迷に悩む地方のテーマパークは少なく、ドイツの森もこの10年の平均は18〜20万人と伸び悩んでいる。起爆剤として期待していたブランコは、登場した矢先にコロナ禍に襲われた。休園はしなかったものの、ゴールデンウイークは例年の5%、緊急事態宣言解除後の週末も以前の半分程度と回復は見通せていない。柳生課長は「ハイジのブランコだけでなく、見ごろを迎えたポピーなど季節の花、動物とのふれあいでリフレッシュしてほしい。『ハイジの森』と言われないように、ほかにも魅力ある企画や遊具も導入したい」と力を込めた。

 ブランコ体験は無料。土日祝日は午前10時半、午後1、3時からの各1時間、平日は午後1〜2時。入園料は中学生以上1200円、4歳〜小学生700円。水、木曜定休。詳しくはドイツの森(086−958−2111)かホームページで。

(まいどなニュース/山陽新聞)