JR山手線の大崎駅に誕生したオリジナルキャラクターが構内のポスターで「自虐ネタ」をつぶやいているとSNSで話題になっている。「大崎ってなにもない」などと忖度のない大胆な言葉を連発しているキャラについて、JR東日本東京支社に尋ねた。また、山手線の中でも「侮れない存在」になっている大崎駅についてデータを元に検証した。

 そのキャラクターは、八の字まゆ毛で駅員の制服に身を包んだウサギ風の容姿で、その名も「おうさき」。口が大崎の「大」になっているのがチャームポイント。特技は「早起き」で始発電車と一緒に起床。誕生日は駅開業日の2月25日。来年の同日で大崎駅が開業120年を迎えることも明記され、メモリアルイヤーを前に大崎駅を身近に感じてもらおうという意図が伝わる。

 ところが、その「おうさき」のコメントがネガティブなのだ。なぜ、眉毛が八の字で悲しそうな顔をしているのかというと、「大崎ってなにもない」「大崎止まりの山手線はいらない」「他の駅と間違えて降りました」と言われ続け、悲しさからだんだんと眉が下がってきた…とポスターには記されている。

 9月に掲示されると、ツイッターには「悲しみを背負いすぎている」「幸せになってくれ」といった感想が投稿され、「周辺は再開発も進んだし、りんかい線・湘南新宿ラインも引き受けて十分役立つ駅だと思うけど、それでもたれ眉なのか」と的確な指摘も。同社の広報担当者はキャラについて「(命名は)社員同士で話し合って決め、(性別について)区別はしておりません」。SNSで「血のついた包丁か」と書き込まれた物は鉄道業務で使う「赤色旗(せきしょくき)」だという。

 自虐ネタ3点についても確認した。

 (1)「大崎止まりの山手線はいらない」。例えば渋谷駅や恵比寿駅などから、内回りで品川駅より先を目指している人にとっては、品川の1つ手前で終点となる「大崎止まり」が来ると、「はずれ」と思うこともあるだろう。そもそも、なぜ「大崎止まり」があるのか。担当者は「大崎駅の近くに車両基地があるためです」と説明した。

 (2)「他の駅と間違えて降りた」。具体的に何駅と間違えられるのか。担当者は「よく品川駅と間違われて、降りられるお客さまがいらっしゃるとのことです」。近年は周囲にビルが急増した大崎駅。品川駅と雰囲気が近いと思った人が1駅前でうっかり降りてしまうのか。

 (3)「大崎ってなにもない」。担当者は「SNSではよくそのような意見が上がっています」という。だが、今では都内有数のオフィス街。大企業も進出してビルが林立し、商業施設も増えてチェーン店も充実している印象だ。それにも関わらず、「何もない」と思われる理由としては、通勤以外の「遊び」の部分か。

 JR東日本エリア内の「1日平均の乗車人員」を同社の公式データで確認した。2019年度で、大崎駅の乗車人員(降車の人員等は含まれない)は17万7095人で14位。うち「定期外(定期券でない人)」は5万6911人、「定期」が12万184人。定期を使う人が、ほぼ通勤者と考えると、7割近い乗客が該当する。逆に、同年度13位の上野駅の場合、定期外が9万5193人、定期が8万7511人で、定期を使わない人が上回っている。アメ横や上野公園、動物園、美術館をはじめ、その街ならではの買い物や飲食関係の店、文化施設などの充実度も起因していると推測される。

 担当者は「自虐ネタ」を前面に出したことに「そんな大崎駅をもっと魅力的にしていきたいためです。社員からの反対意見はありませんでした。皆さまに注目していただき大変うれしく思います」と手ごたえをつかむ。120周年に向けて「お客様と一緒に楽しめるイベントを社員同士で検討中であり、詳細は決まり次第、駅のポスター等でお知らせする予定です」。ポスターでは「おうさきの笑った顔が見たい!この子を笑顔にするため、駅社員一同、大崎駅の魅力向上に努めてまいります!」と決意表明している。

 記者は2006年1月まで大崎が勤務地だった。当地を離れて数年後に仕事で同駅に降り立った時、街の変貌ぶりに驚いたものだ。大崎駅の乗車人員(1日平均)は2019年度が17万7095人で同社エリアの14位。10年区切りで遡ると、2009年度が12万4577人で24位、1999年度は5万7081人で70位と、乗車人員はこの20年間で約3倍増、順位も70位から14位に急上昇している。

 東京五輪が初開催された1964年にリリースされた小林旭の「恋の山手線」では「まず大崎は買いものよ」とアキラ節で歌われる。2度目の開催が予定される来年の120周年が「なにもない」から「なにかある」街へと変わる契機となるか。

(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)