1970年(昭和45)に運行を開始したJR西日本の新快速が、10月1日に50周年を迎えた。敦賀(福井県)〜播州赤穂(兵庫県)間275・5キロを結び、特別料金なしで乗車できる在来線最長の列車。日中は15分間隔で運行され、京都〜大阪間28分、大阪〜三ノ宮間を21分で結び、通勤・通学など関西圏の大動脈だ。姫路列車区の森元克好さん(60)、啓介さん(29)は、親子で新快速の車掌を務める。親子2代、しかも同じ列車の乗務員になるのはJRでも激レアだ。長男の啓介さんが父と同じ仕事を志した理由は、鉄道を題材にした映画のようにドラマチックだった。

父の背中を見て、車掌を志した。大学3年生、将来を考え始めた頃だったと啓介さんは振り返る。大阪市内に買い物に出かけ、兵庫県姫路市の自宅に帰るため乗り込んだ新快速。偶然、克好さんが車掌として乗務する電車だった。

ふだん家で接する姿と、まったく違っていたという。「かっこよく見えた。仕事モードというか、声もふだんと違っていた。家では見ない姿だった。こういう仕事もあるんだ…と印象に残った」。家では優しい克好さんは、制服に身を包むと少し厳しそうだった。働くということを考える時、アナウンスをしたり乗客に応対する父が脳裏に浮かんだ。

就職活動で、JR西日本を志望したことは父に黙っていた。内定を告げると、克好さんは喜んだという。「親としてうれしかった。自分の背中を、どこかで見てくれていた。それまで仕事の話はあまりしなかったが、背中を見て同じ道を選んでくれたのかと…」と、同僚でもある長男の顔を見つめた。

克好さんは1975年(昭和50)に旧国鉄に入社。87年から新快速の車掌を担当している。啓介さんは2014年(平成26)にJR西日本へ。念願かなって、19年から父と同じ新快速の車掌になった。「親子2代は運転士でも数人しかいない」(克好さん)と希少。同じ列車で乗務することもある。

家でも克好さんは、啓介さんにさりげなくアドバイスを送っている。「仕事に関する奥に入った話をするようになった。一緒に新快速に乗れることは、楽しい時間でもある」と、息子の成長をひしひしと感じている。啓介さんも「信頼できる先輩。信頼できる人がいる安心感がある」と父を誇りに思う。親子ということで、職場で周囲から気を遣われることだけが苦手だ。

克好さんが「私たちはお客様の財産…安全や安心を守る、責任ある仕事をしているということを常に意識を持って、初心忘れることなくいつまでも業務してもらいたい」と言葉をかけると、啓介さんも「父からいい乗務員になったと言わせてみせる。技能を高めて“よくやった”と認められる乗務員になれるようがんばっていきたい」と照れくさそう。半世紀の節目を迎えた新快速。安全と安心を守るバトンを、父から子に渡す。

(まいどなニュース/デイリースポーツ・杉田 康人)