納屋に来た姉妹の猫。岡山県に住む一宮さんは、たびたび野良猫が来てはどこかに行くので、そのうちいなくなるだろうと思っていた。ところがこの2匹は納屋に住み着き、やがてそのうちの1匹が妊娠し、4匹の子猫が産まれた。子猫たちの里親は順調に決まったが、そのなかに1匹だけ声を出せない子猫がいた。

納屋に住み着いた姉妹の野良猫

2019年2月、生後4、5カ月くらいと思われるキジトラ猫2匹が、かつて農業機械を入れていた納屋にやって来た。

2匹はそっくりだったので、姉妹だとすぐに分かった。今までも色々な猫たちがやって来ては、いつの間にか来なくなるということを繰り返していたので、この子たちもいずれ来なくなるのだろうと思っていた。でも、この姉妹は納屋をすっかり住処にした。一宮さんはそれぞれ「とも」と「ちか」という名前をつけ、外猫として世話をした。

その後、ちかちゃんは8カ月の間に3回妊娠した。1度目、そして2度目もどこかで出産し、子猫を連れてくることがなかったので、不思議に思っていた。「3度目の時、今度こそうちで産んでくれたらいいのにと思っていたら、10月7日、白1匹キジトラ3匹を納屋で産んだのです」。1カ月が経った頃、白猫と唯一のオスだったキジトラ1匹の里親が決まり、メスのキジトラ2匹が残った。

外猫だけど、大事な家族

キジトラの子猫を「モカ」「ラテ」と名付けた。モカちゃんは、ちょっとワイルド系の顔で、ラテちゃんは、体が少し小さく女の子らしい顔をしていた。しばらくして、ラテに声が出ない障害があることが分かり、ラテちゃんは譲渡せず、家に残すことにした。モカちゃんの里親を探しつつも、モカちゃんとラテちゃんが楽しそうにじゃれあっているのを見ていると、「可愛いなあ、このままいてもいいかなあ、モカが声の出ないラテを助けてくれるんじゃないかなあと思いはじめたんです。モカも残すことに決め、外猫は4匹になりました」と一宮さん。

ラテちゃんは、生後6カ月の頃、右足を骨折してしまった。悪いことに折れた場所が関節の近くで、手術をしなければならなかった。獣医師からは、術後2週間入院して、退院後は2週間のケージ生活を送り、何事もなく半年経ったら、入れているピンを抜くという説明を受けた。費用も結構な金額だった。それとは別に、野良だから手術しないという選択肢もあった。

獣医師からは「死にはしないけど、骨がくっつくことは無いです」とも言われた。しかし「骨がくっつかないというのはかわいそうで、即答で手術をお願いした」という。退院するまで、声こそ出ないけどつらいだろうな、死んだりしないよなと心配ばかりしていて、2週間はとても長く感じた。

退院当日、外で待っていた3匹に、「家の2階にいるから安心して、元気になって戻ってくるから」とキャリー越しに会わせた。ラテちゃんの静養が始まると、その夜、3匹は次々と屋根をつたって2階のケージの中のラテちゃんに会いに来た。それはまるでお見舞いのようだった。

外を自由に走らせてあげたい

ラテちゃんは1カ月間2階で静養し、少し足を引きずっていたが、外に戻っていった。しかし、毎晩屋根をつたって2階に来るようになり、鳴けないので、すだれや網戸をゴソゴソ触って合図をした。そのうち、夜は部屋の中で寝て、朝になるとまた外へ出ていくという生活パターンになった。すると、他の猫たちも夜やって来ては鳴いて、部屋に入れてもらうようになった。

みんな部屋で寝ている時は、ヘソ天をしたり、長く伸びたり、とても外猫とは思えない様子だった。いまでは4匹ともさくら猫になり、こうした生活を続けている。

「完全な家猫にしたら、病気にもならず、事故にも遭わず、長生きできるかもしれません。でも、外の生活を知っているこの子達には、外を自由に走らせてあげたいと思っています。長生き出来ないかもしれませんが」(一宮さん)

ひとつ困ったことは、ラテちゃんがカエルやセミやバッタを生きたままくわえて帰ってくることだ。「もう十分お礼してもらったよ、もういいよ」と言っても、毎晩のように何かしら持って帰ってくる。寝ているとカエルが跳んでいることもしばしば。しかし、一宮さんは、「ラテちゃん今夜も有難う」と言って、なでてあげている。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)