一歩足を踏み入れると、そこには昭和の風景が広がっていた―。「レトロ自動販売機の聖地」と呼ばれる飲食店が京都府舞鶴市にある。うどん、ラーメン、ハンバーガー…。店内はノスタルジックな自販機が壁沿いにずらりと並んでいる。50年ほど前のものという機械が現役で稼働しており、昭和の味を求める老若男女が全国各地から足を運ぶ。平成生まれの記者も、タイムスリップしたような気分を味わってきた。

 「ドライブインダルマ」は1971年創業。谷口高康さん(76)と妻の美津子さん(78)が食堂として開業した。店名は転んでも起き上がる「だるま」に願いを込めた。2年ほどのちに増築し、当時流行していた自販機を設置した。コンビニエンスストアのない時代。国道沿いに立ち、年中無休で24時間営業のドライブインダルマには、釣り客やトラック運転手らが多く立ち寄ったという。

 自販機ではあるが、調理は機械でなく、谷口さん夫婦やその子どもら一家みんなで手掛けている。うどんやラーメンは麺をゆで、手作りした油揚げやかき揚げ、チャーシューなどを載せる。ハンバーガーはカレー風味に炒めたキャベツなどを挟む。多い日は300食ほど仕込むこともあるという。

 ほぼできあがった状態で自販機にセッティングし、硬貨を入れると、機械がだし汁を入れたり加熱したりすることで温かい商品を提供できる仕組みになっている。

 麺類の自販機は「川鉄計量器(現JFEアドバンテック)」製。鉄鋼業は24時間操業のため、従業員らの夜食に活用しようと社食として使われたのが始まりだ。川鉄計量器は昭和55(1980)年ごろに自販機の製造を終了。JFEアドバンテックは「(川鉄計量器時代に製造した自販機が)どれくらい残っているか、我々も把握していません」と言う。

 由良川のそばに立地するドライブインダルマは、過去に幾度も水害に見舞われてきた。2004年の台風23号の際はテーブルほどの高さまで浸水し、自動販売機も故障。雑然とした店内を見たとき、美津子さんはぼうぜんとし、店を畳むことも頭をよぎったという。

 「これ(自動販売機)は全国的にも少ないからつぶしたらあかん」という高康さんの言葉で前を向いたものの、年季の入った機械の修理は簡単ではなかった。引き受けてくれる業者は見つからず、高康さんや長男ら家族総出で直すことに。手探りの作業は2カ月間にも及び、ときには夜通し続くこともあったという。ハンバーガーの自販機は修復できなかったため、代替機を探し回った。

 「台風23号の後、遠くから来て『カンパさせてください』と言ってくれた人や『使ってください』と布巾を置いていってくれた人もいました。名前の通り、七転び八起きでやってこれたと思います」と美津子さんは話す。貴重な自販機は今も毎日、布巾で掃除して清潔な状態を保っているという。

 時代の変化とともに店前の国道の交通量は減少し、客足も遠のいたというが、近年は新聞やテレビ、SNSなどを通じて知った人たちが多く訪れる。「自分の青春を見せたい」と子や孫を連れてくる高齢者から、列車を乗り継いでやって来る中高生まで、年齢層は幅広い。

 店内に置いたノートは来店した客がつづった「ずっと残してください」「40年ぶりに食べた!」「レトロな感じがステキです」といったメッセージで埋め尽くされ、今では約30冊に上る。美津子さんは「今の『昭和の味』を落とすことなく、子から孫へとつないでいきたいです」と思いを語った。

 ドライブインダルマは京都丹後鉄道・東雲駅下車、徒歩約30分。車の場合は、京都縦貫自動車道・舞鶴大江インターチェンジから北東へ約20分。午前8時〜午後6時まで営業。水曜定休。

(まいどなニュース/京都新聞・天草 愛理)