「岨」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。

   ◇   ◇

淡路島と神戸市に集中している名字で、とくに淡路島の北部に多い。「岨」とはあまり見たことがない漢字だ。漢字の読みとしては「そば」だが、名字では「そわ」と読む。似たようなものに「峙」という名字もあり、こちらも「そわ」と読む。

「そば」とは崖が切り立っているところを意味する言葉で、崖にへばりつくような道のことを「そば道」といった。島崎藤村の小説「夜明け前」の冒頭にも「木曾路はすべて山の中である。あるところは岨づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曾川の岸であり」とあるように、「そば」は普通の言葉として使われていた。

「岨」は、もともとは「そわ」だったが、近世以降に「そば」と言われるようになったという。関西に多い「そわ」さんは、古い言葉を残しているのだ。

こうした、崖の切り立ったところに住んでいたのが「そわ」さんで、関西には、「曽和」「曽輪」「楚和」など、「そわ」という言葉にいろいろな漢字をあてた名字がある。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。