「ガンダーラ」や「モンキー・マジック」「ビューティフル・ネーム」「銀河鉄道999」などのヒット曲で知られるロックバンド「ゴダイゴ」のスティーヴ・フォックスさん。ベーシストである一方、ミキシングなどバンドの音作りの面でも中心的な役割を担ってきた。そんなスティーヴさんが、アマチュアミュージシャンの支援として、自身の音響技術を提供する新しい試みを開始。「プロレベルの高品質な音作りで、意欲あるミュージシャンを後押ししたい」と意気込むスティーヴさんに話を聞いた。

■人気絶頂期にゴダイゴを脱退、ハワイで牧師に

1953年、宮城県仙台市出身。75年に盟友のミッキー吉野さんとゴダイゴを結成し、端正な容姿と硬派なキャラクターでボーカルのタケカワユキヒデさんと並ぶ人気を博したが、80年にキリスト教の伝道師になるため脱退した。

その後ハワイで牧師となり、ハワイと日本を行き来する生活を20年以上続けたという。「もうねえ、ずーっと時差ボケに悩まされてました。牧師というより“ボケ師”です」。実はお茶目なスティーヴさんである。

■音響技術の世界に魅入られる

スティーヴさんはデビュー当時、思い描く音をストイックに追求するあまり、見様見真似でミキシングなどの音響技術を習得。レコーディングやライブ会場でのサウンドエンジニアリングを担当するようになった。ライブでは会場ごとに音の響き方が違うため、リハーサルでは自ら入念に調整。海外からこだわりのスピーカーも取り寄せ、「ゴダイゴのステージは音圧がすごい」と評判を呼ぶほどだったという。

以来、すっかり音響技術の虜になったスティーヴさん。99年の再結成からゴダイゴに復帰し、また音作りに没頭する日々を送る。日本には2002年に帰国。現在は「昔から住むのが夢だった」という神戸で暮らし、結婚式場などで牧師の仕事を続けながら、ゴダイゴの活動に参加している。

数年前からは、機材を揃えて自宅に整備した音楽スタジオで、地元ミュージシャンらのミキシングやマスタリングも行うように。…前置きが長くなりましたが、このたびスティーヴさんが始めたのは、この自宅スタジオでのアマチュアミュージシャン支援です。

■あなたの音を一流のクオリティに

「ミキシングやマスタリングはお金がかかりますが、一流の技術によって音楽のクオリティは驚くほど生まれ変わります。今はYouTubeやストリーミングサービスで、誰でも一夜にしてスターになるチャンスがある時代。誰にも負けない『高品質な音作り』は、世界中のライバルから一歩抜け出すための強力な武器になる。私がゴダイゴで培ってきたノウハウは必ず、プロを志す皆さんの役に立つはずです」

ミュージシャンが演奏した音源を、スティーヴさんがミキシング。仕上がりを複数回チェックした後、CD用と配信用にマスタリングして完成となる。「配信はCDとは音量が違うので、マスタリングは分けた方がいい。各種配信サイトに応じた一番いい音に調整してみせますよ」とスティーヴさんは自信を覗かせる。やりとりはFacebookのメッセンジャーとクラウドサービスで完結するため、直接会う必要はないという。料金は応相談。

「私を育ててくれた音楽業界は今、新型コロナウイルスの影響に苦しんでいます」と現状を憂うスティーヴさん。「このコロナ禍を乗り越えるため、私が培ってきた技術、経験をできるだけ還元したい。より高いステージを目指すミュージシャンを支援し、音楽業界の活性化の一助になれば幸いです」

依頼、問い合わせはスティーヴさんのFacebookから。日本語でOK。

■阪神・淡路大震災では1カ月ボランティアも

せっかくなので、ここからは少し取材のこぼれ話を。

阪神・淡路大震災があった1995年1月17日、スティーヴさんはハワイに住んでいた。地震発生から4日ほど経った頃、神戸で宣教師をしていた友人から「家に20人くらい避難してきている。全然寝ていない。余震が怖い」と緊迫した様子の国際電話があり、「これはただごとではない」と即座に飛行機で日本へ。トイレットペーパーや毛布などありったけの支援物資を大型バンに詰め込み、大阪から24時間かけて神戸入りした。

「神戸では支援物資の仕分けや水の配達、瓦礫の撤去などを手伝いました。ボランティア活動に参加した1カ月ほどの間、風呂に入れたのは3回だけでした。何事もなかったかのような大阪の光景とのギャップは、今でも強烈に覚えています」

■ゴダイゴのライブはステージからニンニク臭が…?

ゴダイゴ初期はライブ会場の音響も担当していたため、毎回リハーサルでは延々とホワイトノイズを流し、神経を削りながら音を細かく調整した。「もう、これがしんどくてしんどくて。ニンニクエキスを浴びるように飲んでどうにか乗り切っていました」

他のメンバーもこのニンニクエキスを気に入って飲んでいたため、嘘か本当か、当時のゴダイゴのライブは「ステージからニンニク臭がする」と噂されていたとか。

■2021年の活動予定

ゴダイゴは2021年、ライブを予定している。今年5月に68歳で亡くなったギタリスト浅野孝已さんの追悼の思いも込めたステージにしたいという。

さらにスティーヴさんは、これまでゴダイゴとして出した傑作アルバムの数々を自身の手でリマスターして再発する計画も温めているそうだ。

(まいどなニュース・黒川 裕生)