路上に落ちているゴミを拾い、くすっと笑えるコメントを添えてTwitterに投稿している人がいる。九州地方に住んでいる松 亜樹さん(@AkiMatsu17)。聞けば、1年ほど前からペットボトルや缶、ビンなど飲料系のゴミを拾うようになり、今は週末を中心に路上のゴミ全般を1人で掃除しているという。どういう思いで活動を続けているのか、松さんに話を聞いてみた。

◇きっかけは「大嫌いな父親」の出したゴミ

松さんがゴミ拾いを始めたのは、父親がきっかけだった。

30代の松さんは幼少期から父と折り合いが悪く、「言葉にはできないような嫌悪感」をずっと抱いていたという。ある日、そんな父がカップラーメンの容器や菓子パン、スナック類の袋でパンパンに膨らんだゴミ袋をゴミ箱に捨てているのを見て、「すごく嫌な気持ち」になったのだそうだ。

「路上に落ちているゴミが気になるようになったのは、それからです。路上には、あの日父親が捨てたビニル袋の中身そのもののようなゴミがよく落ちているんです」と松さん。「次第に見て見ぬふりができなくなり、あるとき、空き缶を拾って近くの自販機の回収ボックスに入れました。すると、心が少し軽くなった気がしました」

◇「ゴミが落ちているのに自分は拾わないのか」

それから半年ほどの間は、目についた空き缶やペットボトルを拾っては回収ボックスに入れるというささやかな行動を継続。だがそのうち、「路上には他にもゴミが落ちているのに、自分は拾わないのか」という葛藤に耐えられなくなり、ゴミ全般を拾うようになった。

10月頃からは、“成果”を写真に撮ってTwitterに投稿。コーヒーの空き缶には「ボス、よくぞご無事で」、自動車の高齢者マークの残骸には「免許、自主返納したんだな」など、大喜利のような一言を添え、ほのぼのした笑いを誘う。

「ゴミ拾いというと『真面目で堅い』『近寄りがたい』というイメージがあるので、少しでも柔らかく楽しい雰囲気にしたいという思いでジョーク交じりのコメントを心掛けています。『なんだ、ゴミ拾いって面白そうじゃん!俺もやってみようかな!』と思ってくれる人が増え、ゴミ拾いをすることに対する心理的な敷居が少しでも下がればいいなと願っています」

◇「路上にはこんなにもゴミが」と気づくことの意味

松さんの投稿を辿っていくと、いろんな場所で、いろんな人がゴミ拾いに取り組み、直接の交流はなくとも、ハッシュタグ「#ゴミ拾い」などを通じて緩やかに連帯していることが窺える。とはいえ松さん自身は「誰かと相互フォロー関係になってつながっているわけではなく、あくまでマイペースで取り組んでいます」と話す。

「他の人のモチベーションはわかりませんが、私は『美しい地球を守りたい』という思いが強いです。人類のためだけでなく、地球に生きる全ての生き物のために、少しでも環境汚染を減らしたいと考えています」

ゴミ拾いを続けるうちに、「地球の未来」にまで思いを馳せるようになった松さん。「皆さんも路上に落ちているタバコの吸い殻1本だけでもいいので拾ってみてください。1日に、1週間に、いや1カ月に1個だけでもいい。すると、路上にはこんなにもゴミが落ちているのかと気づくはずです」と呼び掛ける。

「私がゴミを拾っている姿を見た誰かが、『ポイ捨てはやめよう』と思ってくれたら嬉しいですね」

◇自閉スペクトラム症を抱えて

松さんは精神障害者3級で、なかなか仕事に就くことが難しい。現在は工場のアルバイトで月8万円ほどの収入を得ているが、それだけでは生活できないため、実家で両親と同居しているという。自閉スペクトラム症があり、精神科にも定期的に通っているそうだ。

「楽しいことが好きなので、クリエイティブ系の仕事がしたいという願望があります」と語る松さん。YouTubeに自作の動画を投稿しているが、「視聴回数はいつも一桁」。「世間から全く受け入れられていない」と感じるが、「自分が自分らしくいられる場所なので、これからもめげずに続けたいと思います」と話している。

(まいどなニュース・黒川 裕生)