大阪平野や関東平野は海に沈み、瀬戸内海と日本海はつながり、北海道は東西分離。海面が100メートル上昇したら、日本列島はこうなっていました。今夏、ドラマファンを魅了した大和田取締役のあの台詞が脳内で再生します。「…沈、ヴォツですっ」。

「海面が100m上がった世界線を描いてみたら ”日本のようで日本でない列島" が出現。どこに都市ができて、どんな産業が育つんだろう?地形が険しいから国内線が発達する?旅行先はどこがいいかな?・・・などなど考えてるうちに秋の夜が更けていく」

ツイッターユーザーのにゃんこそば(@ShinagawaJP)さんが「日本のようで日本でない列島」と投稿した画像が話題です。日本列島の姿はほぼとどめているものの、東京や大阪、名古屋などの都市圏はほぼ水没しています。記者が真っ先に思ったのは、もはや古典とも言える小松左京氏のSF小説「日本沈没」。高度経済成長の終盤、列島を沈没させてしまうという奇想天外な設定で、空前の大ベストセラーになった作品です。 

日本の国土は山が多いので、海沿ぞいに開けた平野や山に囲まれた盆地など限られたところにしか街を築くことができません。その結果、人口の8割強が海抜100メートル以下の土地に居住しているとされています。標高ごとの人口と面積を調べてみました。国土技術研究センターのサイトによると、標高0〜100メートルの土地は、約10万平方キロメートルで国土面積の27パーセント程度ですが、この地域に住む人口はおよそ1憶人。標高100〜200メートル=1152万人、標高200〜300メートル=421万人と続きます。

ネットでは、100メール上昇後の社会について、さまざまな声が上がっています。にゃんこそばさんに聞きました。

―想像力をかき立てられました。

「先日、私用で新神戸の布引の滝や布引ハーブ園を訪れた時に、日本の地形って意外と急峻だな…と実感したことがきっかけです。私は関東平野に暮らしており、普段山の存在を意識することはないのですが、海と山、市街地と山地が近接している神戸の風景を目の当たりにした時、『この地形のまま、海水面が上下したらどうなるんだろう?』思ったのがきっかけです。

―なんと神戸がきっかけとは!

「地図化には、フリーソフトのGIS(地理情報システム)を使用しています。NASAが全世界の標高や水深を表すデータを公開しており、そちらに色づけしました。標高100mを海陸の境とすることで、海面が上昇した世界を再現しました。細かい話ですが、河川の下流の海岸線付近には土砂が溜まって平野が形成されます。ぱっと見では分かりにくいのですが、土砂の流量を簡単に計算して、平野を広げる(=河川下流の標高を嵩上げする)といった工夫もしています」

―大都市圏はほぼ水没です。

「国土地理院の推計では標高100メートル以下の地域が国土の26.6%を占めるとされています。実際には河川の下流に沖積平野が形成されるため、消失する面積はもう少し狭くなるはずですが、仮に20%が失われるとしても約7万6000平方キロメートルで、これは北海道の90%、兵庫県の9倍です。完全に沈む都道府県はありませんが、沖縄県、大阪府、千葉県、茨城県などは標高が100メートル未満の地域が大半を占めており、大々的に埋め立てや干拓を行わなければ面積比でも過半が沈むことになりそうです」

―当然ですが、神戸も…。

「兵庫県では神鉄丸山駅、布引雄滝、能勢電の山下駅のあたりが海岸線になりそうです。新神戸駅(があった場所)の近くでは、海に注ぐ滝が見られるかも知れません。丹波市の分水界が標高95メートルですから、瀬戸内海と日本海が繋がるかもしれません」

「大阪市が完全に水没します。市内最高地点の鶴見緑地・鶴見新山が標高39メートルですから。千里中央駅も標高約80メートルですから、海の底になるはずです。近鉄奈良線の石切駅が約110メートル、生駒駅が約142メートル、近鉄奈良駅が約80メートル…ということで、生駒山が島になるだろうと想像されます。現実世界の都道府県という定義は通用しないでしょうし、思いがけない土地が大都市として繁栄するはずです」

―遷都先はどこがふさわいいかと心配します。

「農地を確保しやすく、漁港や貿易港も作りやすい宇都宮あたりが首都に適していそうです。一方で、国土が山がちになるので、地域間の交流が難しくなります。九州(阿蘇山麓)、琵琶湖畔などにも政権が作られ、覇権を争う世界が到来するのかもしれません」

―「日本100メートル沈没」みたいな小説が書けそうです。

「ツイートに寄せられたコメントは歴史的な見地での考察から、都市論、人口論に絡めたコメント、出身地や居住地に絡めたコメントなど多岐にわたっています。一枚の地図が皆さんの想像力をここまで刺激できるのか!と思うと、地図という媒体の奥深さや、地理と他の分野が密接にリンクしていることを実感しました」

地理と統計という2つの分野に関心があるにゃんこそばさん。両者を組み合わせて「カルトグラム」(地図によるデータの可視化)という形で表すことで、新たな気づきが得られたり、日々ぼんやりと感じていたことが裏付けられたりして物事への見方が変わってくることに気づいたそうです。「都市を、地方を可視化する 5656map―ごろごろしながら地図を楽しむサイト」を開設し、コンテンツをアップしています。

(まいどなニュース/神戸新聞・竹内 章)