「巨椋」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。

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京都の歴史に詳しい人にとっては馴染みがあるものだが、それ以外の人にとっては難読で、「巨椋」と書いて「おぐら」と読む。

今ではちょっと信じがたいが、かつて京都市の南には巨椋池という大きな湖があった。現在の京都市伏見区・宇治市・久御山町の3市町にまたがる広大なもので、「池」というよりは完全に湖という規模だった。

豊臣秀吉は伏見城を築くと巨椋池に堤防を築き、巨椋池は分割されて小さくなった。それでも昭和の初め頃でも周囲8キロというかなり大きな湖で、漁も行われていた。しかし、生活排水の流入によって水質が悪化したこともあり、干拓事業によって昭和16年に消滅。池は広大な農地に変貌した。

この近くにある、京阪電車の中書島駅や近鉄京都線の向島駅、足利義昭が織田信長に抗して籠城した槙島城といった地名は、いずれも巨椋池に浮かぶ島だったことに由来している。

この巨椋池に因む名字が「巨椋」で、現在は滋賀県長浜市に集中している。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。