引っ越す時に、「懐いていない」のを理由に置き去りにされた子猫、クララちゃんは、事故で脚の一部を失くした。近所のおばあさんが見かねてごはんをあげていたが、おばあさんも高齢で、いつまでも世話をできるわけではなかった。

引っ越す時に捨てられた子猫

クララちゃんは千葉県で、個人で猫の保護をしているAさんが譲渡サイトで里親を募集した。知り合いのおばあさんの隣人が引っ越す時に、この子は懐いていない、捕まらないなどと言って置いて行ったのだという。生後6カ月くらいだった。

心配したおばあさんがご飯をあげたが、もともと母猫とベッタリ一緒にいたようで、置き去りにされたショックと母猫がいない寂しさから3日間ほど何も食べなかったそうだ。

同じ頃、別の人に捨てられて行き場を失った生後6カ月くらいのガリガリに痩せた茶トラの男の子が、おばあさんのところに迷い込んで来て、クララちゃんに寄り添うようになった。クララちゃんは、その子と一緒だとごはんを口にするようになった。

クララちゃんは、飼い猫とはいうものの、元飼い主に可愛がられていたわけではなかった。

外猫と一緒に外でごはんをもらっていたようだった。保護した時も、ノミがたくさんついていて、お腹にも虫がいた。また、クララちゃんは事故に遭い、左脚の先を失くしたとおばあさんは言っていた。

おばあさんは2匹にごはんをあげていたが、この先ずっと面倒をみられるわけではなかった。「医療費等負担するので、保護して里親さんを探して欲しい」と、Aさんに相談してきた。2016年11月、Aさんは、2匹とも元飼い猫だったのですぐに懐くと思い、保護して、里親を探すお手伝いをすることにした。クララちゃんは、最初は警戒したが、すぐに懐いたという。

先代猫を亡くした寂しさに耐えかねて

茨城県に住むHさんは、2016年12月初旬、15年間をともに過ごした先代猫を半年の闘病の末に亡くした。猫のいなくなった家は寂しすぎて耐えられなかったため、すぐに譲渡サイトで先代猫に似たキジトラの子を探した。

しかし、年老いた猫と静かな暮らしをしていたので、元気な子猫が家の中を飛び回るイメージがなかなか持てずにいた。そんな時、生後半年のキジトラの子の写真が目に留まった。「ふにゃ〜とした穏やかな表情、脚にハンデがあるということもかえって今の我が家には合っていると思い、ぜひこの子と暮らしたいとすぐに保護主さんに連絡をしました」

12月、Aさんの家にお見合いに行き、抱っこしてみると、「小さくてふわふわで、ぱつんぱつんのころんころん、可愛いダンゴムシのようでした。きっと怖くて緊張していたのだと思うのですが、抱き上げた時に体が伸びずにくるんとまるまっていたので、ついダンゴムシを連想してしまったんです。つい先日までしわしわのお婆にゃんと暮らしていたので、子猫のピカピカツルツルの肉球はまっさらのおろしたてのよう。お婆にゃんは貧血だったので、子猫の健康的な真っ赤な舌も、とても強く印象に残りました」

HさんはAさんといろいろ話をして、 そのまま譲渡してもらった。家に着くと用意していた段ボールハウスに入って緊張していたが、翌日の朝には撫でるとゴロゴロ喉を鳴らした。

新しい家族を迎えて笑顔が戻ってきた

名前は、先代猫の名前キトゥミールを継いで、愛称をトゥトゥにした。

トゥトゥちゃんは隠れたり立てこもったりすることなく、すぐに部屋やH夫婦に慣れたが、初めの数日は部屋に入る時だけ挨拶のシャーがあった。先代猫に似たキジトラの子を迎えたと思っていたが、よく見たら背中に縞がなく、ムギワラ猫だった。先代猫にはなかった色合いがとても美しく、かえって魅了されたという。

トゥトゥちゃんは左後脚のかかとから先がないので、高いジャンプはできない。しかし、柱は駆け上るし、キャットタワーをつたって梁の上を歩いたりもする。仲間の猫たちと元気に走り回り、腰高窓の高さならジャンプして乗ることもできる。ハンデがあっても普通に元気な子猫だった。

少し怖がりで慎重な性格だが、仲間のすることをよく見ていて、自分にできそうなことは真似をする。仲間が腰高窓にジャンプするのを見て、じっくり考えた末に挑戦して見事乗れるようになった。しかし、高さ160cmほどをジャンプして棚の上に跳び乗る仲間を見ても、それは真似しない。

「自分の限界を知っているのはトゥトゥの賢さだと思います。そしてじっくりと時間をかけて少しずつできることを増やしていく姿勢は素晴らしく、尊敬しています」

Hさんは、先代猫を亡くしてすぐにトゥトゥちゃんを迎えたが、トゥトゥちゃんがいるので、先代猫の話を家族の中で出せるようになった。トゥトゥちゃんの愛らしさと前向きに頑張る姿が、Hさん夫妻の心の穴を埋め、笑顔にしてくれた。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)