「腹水がたまっている」を理由にブリーダーが繁殖用の雌猫を飼育放棄した。保護された後、実は腹水がたまっていたのではなく、妊娠していたことが判明、母猫は無事出産した。母猫の里親は決まり、その後、2匹の子猫兄弟も施設で里親募集が開始された。

ブリーダーに飼育放棄された猫

2019年10月、台風の日に母猫は無事出産した。約5ヶ月後、一足先に母猫の譲渡先が決まり、2020年4月、子猫たちも保護団体「ラフスペース」で里親を探した。

そのころ東京都に住む春日さんは、2019年10月、まだ1歳だった先住猫を亡くし泣き暮らしていた。

「二度と猫は飼うまいと思いながらも、日々SNSで猫を見ずにはいられませんでした。そこで偶然ラフスペースという場所があることを知り、保護猫のことも知ったのです」。ある日、春日さんは、ラフスペースが、猫の一時預かりボランティアを募集している投稿を見た。緊急のレスキューがあり、施設に入りきらない猫が出てきたのだった。「助けてあげたい!と思い、夫婦で話し合いました。私達は一時預かりではなく、今施設にいる子を引き取るという形で協力することにしました」

里親になるという決意

小さい頃から犬猫鳥など常に動物のいる生活をしていたので、動物と暮らすことは自然なことだった。特に、家にいることが大好きな春日さんは、猫が一番好きだった。

看取る勇気はあるのか、コロナ感染した場合はどうするのかなど、いろいろ悩んだが、猫たちのレスキューは待ったなし。それまでは先住猫を失った悲しみを癒すためにラフスペースに行っていたが、その日は「里親になる!」という決意で向かったという。

引き取りたい子を決めていたわけではなく、単頭飼いで寂しい思いをさせた先住猫のことを考え、最初から2匹引き取ると決めていた。

ブリーダーが飼育放棄した母猫が産んだ子猫たちは、春日さん夫妻がラフスペースに行く3日前に施設に来た。先代猫が亡くなった時に産まれたということにも運命を感じたという。兄弟でくっついている姿を見て、春日さんは、早く家で自由に生活させてあげたいと思ったという。相性を心配しなくてもいいということも後押しして、春日さんは2匹の里親申請をした。

この子たちを守るために強くなろう

2020年5月6日から2週間のトライアルがスタートした。名前は、麦の色、チャイティーの色に近かったので、麦くん、チャイくんと名付けた。

家に来た当初は、リビングのソファの下で2匹揃って眠ることが多かった。それでも数日後には家に慣れたようだった。初日から同じ量のごはんを出していたが、日に日に麦くんが早食いになり、チャイくんのごはんまで食べるようになった。春日さんは、別々の部屋でごはんを食べさせることにしたが、その日からチャイくんがまったく食べなくなってしまった。「もしやと思い同じ部屋で食べさせたら、チャイがモリモリ食べ始めたことが今も印象に残っています。兄弟の絆を感じた瞬間でした」

麦くんは自由奔放。主張が強い割にはかなりの甘えん坊。チャイくんは大人しく、空気を読むタイプ。甘えたくても我慢するという。兄弟はフミフミをしないが、チャイくんは手の爪をチューチュー吸う癖がある。チャイくんが爪を吸い始めると、なぜか麦くんがチャイくんの耳をチューチューする。何とも言えない姿が、春日さんには少し切なく可愛らしく映っている。

2020年は、誰も経験したことのないコロナ禍で気持ちが沈みがちだったが、麦くんとチャイくんの存在が平和な日常を思い出させてくれた。春日さんは、「どんなことがあっても、この子達を守るために自分達が強くなろう」と思っているという。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)