「東風平」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。

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春に東から吹く風のことを「こち」といい、「東風」という漢字をあてた。

平安時代、大宰府に左遷されることになった菅原道真が、邸に咲いていた梅の花に向かって詠んだ歌「東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春を忘るな」は有名だ。自分が大宰府に左遷されても、東風が吹いたら春になったことを感じて咲くようにとうたったもので、「大鏡」や「拾遺和歌集」に収載されている。ここから、梅が道真を慕って大宰府まで飛んで行ったという「飛梅伝説」も生まれ、大宰府天満宮には神木「飛梅」が残っている。

この「こち」から生まれた名字が「東風平」である。ルーツは琉球の東風平間切東風平村(現在の沖縄県島尻郡八重瀬町)という地名。沖縄の地名は琉球語に因んでいるため本土とは読み方がやや異なり、「東風平」で「こちんだ」と読む。

現在は那覇市周辺と宮古島に多い。

この他、山口県に「東風浦(こちうら)」、広島県には「東風上(こちがみ)」という名字もある。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。