先日、以前同じ職場で働いていた女性と久しぶりに会い、お互いの近況について話をしました。彼女も私と同じシングルマザーで一緒に働いていた当時から、いろいろと相談し合う仲で、いまでも定期的に「調子はどう?」と会えなくても連絡を取り合っています。

彼女は子どもがいるとは思えないほど、いつでも若々しくスタイリッシュな服装でメイクもきれいにしています。人当たりもよく、仕事も完璧にこなす頑張り屋さんなので、私はいつも頑張りすぎて疲れてしまわないかと心配していました。

前回会ったときは、転職をして某大手企業で派遣社員をしていると聞きました。

新しい職場に移ってからも、子どもを寝かせてからコツコツと勉強をして、資格を取得したりといった仕事の頑張りが認められ、正社員への話も打診されていると、うれしそうに話していたので、現在も順調に活躍しているのだろうと思っていたのですが…いつもより心なしか元気のない彼女が打ち明けてくれたのは、辛かったセクハラの日々についてでした。

上司として尊敬していた部長だったけど…

彼女は、正社員になれるという願ってもない機会に、より意欲的に仕事に取り組み、社員の方々の飲み会にも懇親を深めるためにと、できる限り参加するようにしていたそうです。

普段から業務上、別の部署の方と関わることが多く、飲み会でも部署を超えて交流があったそうです。なかでもコンプライアンス部署の部長職の男性が、社内の飲み会の場でも、大変な家庭環境なのに「本当によく頑張っている」と激励してくれることがありがたいと以前から聞いていました。

その部長は、語学も堪能で頭が切れ、部下からだけでなく上司からの信頼も厚く、人柄も尊敬できる人だったといいます。彼女としてもその部長に褒められることを名誉に思い、会社の上司として慕っていたとのことでした。

プライベートで呼び出されてから雲行きが怪しく

ある日、彼女がその部長から「話がある」とプライベートで食事に呼び出されたことから、雲行きが変わりだしました。

他部署の部長が派遣社員の私を、ましてや妻子のある男性が個人的に呼び出すなんて、なんの話だろうと落ち着かずにいると、伝えられたのは「社内の男性を君に紹介したいんだがいいか?うちの会社の人間が相手なら信用もできるし、将来的にも安泰だから力になりたい」という話だったそうです。

突然の申し出に驚きつつも、断る理由もなかったので「ぜひ」とお願いをし、妙な緊張をしていたことを申し訳なく思っていたらしいですが、安堵したのもつかの間、それ以降食事に誘われる頻度が高くなり、夜遅くに電話がしょっちゅうかかってくるようになり、さすがに戸惑いだしたそうです。

その後「例の件で」と再び食事に呼び出され、伝えられたのは予想だにしていなかった、衝撃的すぎる言葉でした。

「君を誰かに紹介したいと思ったのは確かだが…僕が君の魅力に魅せられてしまい、他の人ではなく僕の相手をして欲しいと思うようになってしまったんだ。もちろん仕事だけじゃなくて『生活面での援助』も考えているけど、どうかな?」

自分の立場を利用して、頑張っている彼女の弱い部分につけ入ろうとした、ただの最低男だったとわかって、上司として部長を尊敬していた彼女は深く傷ついたことでしょう。

それでも仕事に支障があっては困るので、とっさに笑って「冗談はやめてくださいよー!」とその場は収めたそうです。

人事部に報告が…これで安心と思っていたら

それでも、彼女に対する部長のアプローチは日増しにエスカレートしていきました。社内でも一方的に「ずっと見てるよ」と連絡が来たり、わざわざ彼女の側を経由して「今日も綺麗だね」と声をかけ、肩など体をタッチしてから自席に戻ったり…。

いよいよ耐え兼ねた彼女は、正社員にならないかと誘ってくれている直属の上司に相談をしました。すると、驚きながらも事態を理解し、部長の行動を重く受け止め、人事に訴えてくれるという流れになりました。

しかし、例の部長は人事部長と横のつながりがあるため、報告そのものは人事部に届いたそうですが、まともな対処はしてもらえず…。彼女は守られるどころか、会社にいづらくなるようないじめに遭い、ついには退職に追い込まれたのでした。

法的手段を取れば優位なはずですが、セクハラと社内いじめで彼女の心は、すっかり憔悴しきってしまいポッキリと折れてしまったそうです。

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同じ女性として、またシングルマザーとして、もてあそばれた彼女の気持ちが痛いほどわかり、理不尽に傷つけられチャンスを奪われたことにとても憤りを覚えました。とはいえ、傷ついても子どものため、生活のために立ち止まってはいられないのが現実です。彼女は気丈に新たな場所で、いっそう頑張っています。

(まいどなニュース特約・長岡 杏果)