マリンちゃんは、野良猫の子猫だった。母猫や兄弟と一緒に保護されたが、警戒心が強く、なかなか里親が見つからなかった。マリンちゃんが1歳になろうとしている頃、神奈川県に住む角田さんは、飼い猫のために2匹目の猫を探していた。

臆病な子猫

2018年6月、茨城県で保護活動をしている「ポチたま会」のスタッフは、ある地域にたくさんの野良猫がいるという情報を入手し、順次TNRをしていた。1匹の母親を捕獲した時、偶然2匹の子猫も捕獲器に入った。子猫たちは生後2カ月ほど。母猫は若く見え、子猫を産んだようには見えなかったという。父猫は、その辺りに出没していた真っ白でまっすぐな尻尾の猫のようだった。

三毛の母猫は愛想が良く、すぐに里親が見つかった。2匹の子猫のうちキジトラ猫は人懐っこかったので早くに家族が見つかったが、青い瞳の女の子はとても怖がりさん。何度か譲渡会に出たが、里親希望者はなかなか現れなかった。しかし、もうすぐ1歳になるという頃、角田さんと出会った。

角田さんは、愛猫のナスカちゃん(12歳)が天に召されてからというもの、一緒に暮らしているアルクくん(5歳)が角田さんに依存するようになったため、新しい猫を探していた。アルクくんは、角田さんがそばを離れるたびに大きな声をあげて角田さんを呼ぶようになったのだ。

「それはそれでとても嬉しいことでしたが、やはり1匹だけでは心細いのかもしれないと思いました。何より私も息子も猫が好きですし、やはり保護猫を助けたい気持ちも大きかったのです」

角田さんは、譲渡サイトや保護団体のブログを見て猫を探した。

私を見ないで!とイカ耳に

角田さんは「ポチたま会」の保護日記を見て、子猫のことを知った。以前から漠然とソマリ種のような長毛猫や、シャム系ミックスの青い瞳の猫を探していた。三鷹市と原宿で開催された譲渡会に猫好きの身内と足を運んだが、縁がなかった。やがてサイトで見つけた子猫は、ホエールウォッチングのために何度も訪れている沖縄・慶良間の海の色と同じブルーの瞳をしていた。角田さんは、すぐにポチたま会にアンケートを送り、和光市で開催されていた譲渡会に参加して女の子とお見合い。怖がりの子猫は、まるで「私を見ないで」とでも言うようにイカ耳になった。しかし、角田さんの気持ちは決まっていたという。

角田さんの息子が、「どの猫でも引き取りたい」と言っていたこともあり、角田さんは子猫を迎えることに。その日のうちに書類にサインした。

慶良間諸島の海の青さに瞳の色が似ていたので、マリンちゃんと名づけた。

慌てず、焦らず

2019年3月3日、「ポチたま会」のボランティアで、マリンちゃんを預かっていた夫婦が連れてきてくれた。ケージの中のステップや水飲み器の位置まで、今までと同じような環境にするために丁寧に時間をかけてセットしてくれた。

「ボランティアさんの猫に対するあたたかいお気持ちが分かり、とても印象に残りました」

夫婦は「顔周りは撫でることができますが、背中は触られると怖がります。嫌がるところには触れないでください」と話した。マリンちゃんはケージの中のハンモックで、イカ耳状態でアンテナをいっぱい立てて角田さんを凝視した。かなり緊張しているようだった。

「数回ウウウウ…とうなったので、綺麗な瞳を見つめるのはできるだけ我慢しました。おでこに少しだけ触れてみましたが、スキンシップは焦らず、フードとトイレのチェックだけにしていました」

心を開いてくれるまで1年半

初日以降、角田さんはケージの隣で寝た。マリンちゃんは、夜中になるとケージの中でトイレのチップをかき出して落ち着かない様子だった。2日目、アルクくんとケージ越しにお見合いさせようと思ったが、恐る恐るケージに近づいたアルクくんの位置からは、ハンモックの中でじっとしているマリンちゃんの姿は見えないようだった。それでも3日目にはマリンちゃんの目が穏やかになってきた。1週間ほど経つと、ケージの中であればどこを触っても怒らなくなった。2週間経ち、アルクくんと最接近、お見合いに成功したという。そのすぐ後、偶然2匹が至近距離で遭遇したので角田さんは慌てたが、2匹は頭をゴッツンして挨拶し、その後はアルクくんがマリンちゃんに追いかけ回される日々となった。家に迎えて1年半経った頃、ようやくマリンちゃんのほうから角田さんの膝に乗るようになった。取っ組み合いではアルクくんがいつも負けてしまう。

「アルクとマリンは毎日じゃれあう仲になりましたが、くっついて眠るほどの距離ではないことが少々残念です。でも、姿が見えなくなるとお互い鳴いて呼び合う様子や、私が2匹のいるリビングに入ると2匹が同時にベッドから下り、ノビーッとしながら出てくるところがとても愛しい。時々オモチャを手にした私を置いて、アルクとマリンが遊び始めることもよくあるので、仲良しなのでしょうね」

マリンちゃんは角田さんにとって4匹目の猫だ。保護猫は先住猫アルクくんとマリンちゃん。純血種の猫にも個性はあるが、保護猫は純血種に比べてそれぞれの個性が際立っていて毎日が楽しいという。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)