「保護犬」や「保護猫」の存在は広く知られるようになってきました。では「保護うさぎ」はどうでしょうか。「え、そんなのいるの?」といった反応が多いかもしれません。でも実際は、山や河原に捨てられるうさぎや、多頭飼育崩壊の末にレスキューされるうさぎ、さらには幼稚園や小学校など“教育”の現場にいるうさぎが劣悪な飼育環境にさらされ、命を落としたり保護されたり…といった問題が全国各地で起きていると言います。

「一番の問題は、うさぎの生態や正しい飼育方法が知られていないこと。学校で“外飼い”を見ていることもあって簡単に飼えると思われがちですが、実際は暑さにも寒さにも弱いので年中エアコンが必要ですし、病気やケガも少なくない。そうなると医療費も掛かります。そもそもうさぎを診てくれる動物病院は少ないんですよ。かわいいと飼い始めたはいいけれど、『こんなに大変だとは思わなかった』という身勝手な理由で捨てる人も残念ながらいます。学校でも正しい知識を持った大人がいなくて、狭い小屋の中ですし詰め状態になるほど数を増やしてしまったり、病気やケガを見つけてあげられなくて命を落としたりといったケースが後を絶たないんです」

 現代のうさぎ事情を教えてくれたのは『一般社団法人LIBERTY(リバティ)』代表の藤田敦子さん。10年以上前からうさぎについて正しい知識を広めようとパネル展や専門家を招いてのセミナーなど啓発イベントを開催し、必要に応じて保護・譲渡活動も行っています。

「うさぎを助けたい気持ちはもちろんありますが、それよりも“人を変えたい”思いが強いですね。人が変わらないと、小さな命が粗末に扱われる現状は変えられませんから」(藤田さん)

 パネル展などは犬や猫に関するイベントやフリーマーケットの会場の一角を借りて行うことが多いそう。「今はまだうさぎに関心のない人たち、これから飼うかもしれない人たちに向けて発信するため」(藤田さん)です。

 犬や猫に比べると飼育頭数は少ないものの、うさぎをペットとして迎える人は確実に増えています。ハーネスとリードを付けて外を散歩させる「うさんぽ」なる言葉が生まれ、「ラビットラン」まで存在するのだとか。藤田さんは「事故に遭うこともあるし、イタチやトンビに持って行かれることもある。ダニが付いたりガラスを踏んでケガをしたり…うさぎにとってはリスクが高い」として譲渡条件に屋外散歩禁止を入れていますが、一方で「うさぎには日光浴が必要」という意見もあるようです。ただ、「日光浴」と「うさんぽ」はイコールではありません。日当たりの良い室内や、危険がなく飼い主の目が行き届くベランダなどで遊ばせてあげるだけでも日光浴にはなるでしょうし、たくさんの危険が潜む屋外散歩が本当に必要かどうか…。一つ言えるのは、正しい知識を持たないまま見た目のかわいさだけで外に連れ出す行為は、うさぎのことを本当に考えているとは言えないということです。

 一般家庭でのうさぎの飼育頭数が増えた要因はいくつか考えられますが、きっかけの一つに“干支”があるようです。

「前回の卯年(うさぎどし=2011年)は半年で前年の売り上げを上回ったと、うさぎグッズのメーカーの人に聞きました。国内のうさぎが足りなくなって、台湾から輸入したほどだったそうです」(藤田さん)

 翌年、保護依頼が増えたのは想像に難くありません。次の卯年は2023年。きっとテレビCMなどにもうさぎが多く登場し、一時の感情で迎える人も増えるでしょう。「それまでに何か動かないと」。藤田さんはケージに入った保護うさぎたちを見ながら、そうつぶやきました。

 リバティには店舗型事務局があります。『SPEAR(スピア)』という名前はSanctuary(憩いの場)、Public Education(情報提供)、Action(行動)、Rabbit(うさぎ)の頭文字を取ったもの。やむを得ない事情で保護したうさぎたちが生活していて、月に一度譲渡会が開催されるほか、普段からうさぎに関する本や資料を閲覧できたり、飼育相談にも応じてもらえます。「うさぎについて正しい知識を学んでほしい」という藤田さんの願いが込められた場所です。

 譲渡会を訪れる人の約半数は「飼うのは大変そう」と言って里親になることをやめるそうですが、藤田さんは「それでいい」と言います。

「何も知らずに飼ってあとで大変さに気づくよりも、ちゃんと分かった上で飼う、または飼わない選択をする。そのほうがずっと責任ある行動だと思います」

 命を預かるということは、きれいごとばかりではありません。藤田さんはうさぎのかわいらしさとともに10年先、15年先まで続く飼育の大変さも伝えた上で、「適正飼育」と「終生飼育」ができるのかを今一度、自身に問うてからうさぎを迎えてほしいと願っています。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)