昨今、日本でも選択的夫婦別姓の議論で盛り上がっています。ロシアでは夫婦同姓、夫婦別姓が認められていますが、夫婦同姓であっても男性と女性で姓が異なります。ロシア人のちょっと不思議な姓についてロシア人のインタビューを交えながら解説しましょう。

ロシア人の不思議な姓のお話

これにはロシア語の文法が大きく関係しています。ロシア語の名詞には性の区別があり、それが名字にも適用されるのです。「女性」の場合、多くは「ア」「ヤ」いった語尾が付きます。

たとえば、プーチン大統領は名字は男性なので「プーチン(Putin)」ですが、これが女性だと「プーチナ(Putina)」になります。同じ要領で、「ドストエフスキー(Dostoevsky)、女性は「ドストエフスカヤ(Dostoevskaia)」となります。男性・女性で変化するため、夫婦だけでなく子どもも性別によって姓が変わります。

ロシア人の人名は、名(imya)、父称(otchestvo)、姓(familiya)から成ります。プーチン大統領だと「Vladimir Vladimirovich Putin(ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン)」となり、「Vladimir」が名前、「Vladimirovich」が父称、「Putin」が姓となります。

ロシア人の姓の歴史はなかなか興味深く、父称と関係があります。姓や父称が用いられたのは16世紀と言われています。父称は父親の名に由来し、16世紀には上層階級の特権として使われました。しかし父称だけでは本人と父親の関係しかわからず、家系の誇りが示せないため、姓がつくられました。もともとロシア人の姓は祖父の名からつくられるのが一般的で、当初からロシア語の文法に従い、男性・女性で異なっていました。

農民が姓を持ったのは1861年の農奴解放令後のことです。ところでロシア人の姓でよく見られる「〜スキー/〜スカヤ」の多くは貴族が持っていた所領の地名に由来します。

ロシア連邦にはロシア人以外にも数多くの民族が住んでいます。そのためアルメニア系やトルコ系の姓にロシア語の語尾を加えた上でロシア風にしたものも多く、ロシアで姓を見ると様々な民族が住んでいることを実感できます。

ロシア人やロシア人パートナーを持つ日本人はどう思っているの?

それでは夫婦同姓であっても男性・女性で姓が異なることに対してロシア人やロシア人パートナーを持つ日本人はどう思っているのでしょうか。

リトアニア生まれのロシア人の方に尋ねると「ロシア語の文法から考えると男性や女性の姓が変化することは当然。そのためまったく気にならない」ということでした。

一方、ロシア人パートナーを持つ日本人男性は「夫婦で姓が異なっていても個人的にはあまり不自由はないと思う」とのこと。ちなみに日本人男性とロシア人女性が結婚した場合はロシア人女性が日本人男性の姓に合わせるのが一般的とのことでした。

このように男性・女性で姓が異なる点は文法に起因するため、当のロシア人はまったく気にしていないようです。

ロシア人だけじゃない? 夫婦同姓でも姓が異なる国

実はロシア人のように夫婦同姓でも姓が異なる国はあります。それはロシアを含む、チェコやポーランドなどのスラヴ語圏の国です。たとえばチェコでは夫婦同姓であっても男性は「ノバーク」、女性は「ノバ―コバー」になります。チェコの例もロシアと同じように文法に起因します。

このように姓を取り上げるだけでも、私たちの「当たり前」が世界では「当たり前ではない」ことに気づかされます。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)