「紡車」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。

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兵庫県にある難読名字で「つむ」と読む。「紡ぐ」だけで「つむぐ」と読むため、名字からは「車」の読みか消えていることになる。

この名字のルーツは古い。古代、布をつくるために繊維に撚りをかける道具を紡錘(つむ)といい、弥生時代の遺跡からも発掘されている。

紡錘は、円形に穴のあいた「紡錘車(つむぐるま)」と、その穴に通す棒状の「紡茎(ぼうけい)」からできている。

この「紡錘車」に因むのが「紡車」という名字である。「服織部」が「服部」、「上毛野」が「上毛」となったように、漢字3文字の地名や名字などが2文字になる際には、中央の漢字が落ちることがあった。

そのため、「紡錘車」も中央の「錘」という漢字が抜け落ちて「紡車」となる一方、読み方では末尾の「くるま」が欠落したため、「紡車」で「つむ」と読む漢字と読みが対応していない難読名字となったものだ。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。