ムギくん(8カ月・オス)は、ボランティアが保護した母猫が産んだ子だった。岡山県に住む高田さんは犬派だったが、庭に来るようになった野良猫が家で出産したのを機に猫を飼ってみたいと思うようになった。しかし、子猫たちは全員里親が決まり、母猫は不慮の事故で亡くなった。そんな時、ムギくんを飼わないかという話が舞い込んだ。

犬派だったが猫のかわいらしさに目覚める

岡山県に住む高田さんは、以前飼っていた犬が亡くなって以来、しばらく何も飼っていなかった。その時家に野良猫が来るようになった。最初は警戒心が強く、なかなか近寄ってこなかったが、2カ月ほどすると近づいてくるようになった。やがてその野良猫は高田さん宅で3匹の子猫を産んだ。

「猫は飼ったことがなかったのですが、一気に4匹の猫を世話することになり、てんやわんやでした。でも、猫の可愛さに家族は癒されました」

子猫はみんな里親が決まり、母猫は飼う決意をした矢先、不慮の事故にあい亡くなった。悲しみにうちひしがれていた時、知り合いの保護猫ボランティアから、「産まれて1カ月ぐらいの子猫がいるんだけど飼わないか?」と声をかけられた。ボランティアが保護した妊婦の猫が産んだ子猫だった。高田さんは猫を飼う準備もしていたため、何かの縁だと思い飼うことにしたという。

妊婦の野良猫が産んだ子猫

2020年9月26日、高田さんのお母さんが子猫を迎えに行った。8月8日生まれで、生後1カ月半くらいになっていた。家に着いてキャリーから出すと、最初は外の様子をうかがっていたが、すぐに部屋にも人にも慣れておもちゃで遊んだ。遊び疲れた後は、高田さんの膝の上で寝息を立て始めた

亡くなった野良猫が産んだ子猫のうち、コムギと名付けた子猫にそっくりだったので、ムギくんという名前にした。

ムギくんは、生後1カ月半にしては身体が小さく、猫風邪が結構酷い状態で弱々しかった。家に来て2〜3カ月は薬を飲んでいないと猫風邪がぶり返してしまい、病院通いと薬漬けの日々だった。今では猫風邪の症状が出ることもなく、元気に過ごしているという。たくさんの猫に囲まれて生活していたので人見知りすることもなく、すぐに慣れた。

頼れる兄貴になったムギくん

ムギくんの性格は甘えん坊。たくさんの猫に囲まれて生活していたためか、1匹でいるのは寂しいようだ。人懐っこく、初対面の人の膝の上にもすぐ乗る。おおらかで、シャーと怒ったことがない。

また、ムギくんは高田さんの妊娠中、お腹にくっついて寝るのが好きだったが、今でも生まれた赤ちゃんにくっついて2人でよく寝ている。お互い体温が高いので安心するようだ。

長女を出産して退院した高田さんが家に帰った時、高田さんは赤ちゃんを抱っこし、お母さんがムギくんを抱っこして会わせた。ムギくんは身を乗り出して赤ちゃんの匂いをクンクン嗅ぎ、手を伸ばして頭をナデナデした。その瞬間、高田さんは愛おしさがあふれ、お母さんと一緒に泣きそうになったという。

ムギくんは、長女をじーっと見守ってくれることもある。泣いていたら一番に部屋に駆けつける。大人には甘えて噛むこともあるが、長女に噛んだことは一度もないし、触る時も爪を出すことはない。

「甘えん坊のムギが娘の前では立派にお兄ちゃんをしてくれています。娘がいない時は甘えん坊に戻ります」

 ある時、ムギくんが急に駆け出し廊下で鳴きはじめた。普段あまり鳴かない子なので何事かと見に行くと、娘を寝かしつけていた部屋の前で鳴いていた。部屋の中を覗くと、小さな声で娘がグズグズ泣いていた。高田さんは、泣いているのを教えてくれたのかとびっくりした。

犬派だった家族は、猫のかわいらしさにメロメロになった。最初は赤ちゃんと猫がいる生活に不安があったが、ムギくんは頼れるお兄ちゃんのようだった。高田さんは驚くと同時に、いつも2人のふれあいに癒されているという。

「猫風邪で弱々しかったムギが、しっかり立派なお兄ちゃんになり、家族も喜んでいます。ムギにはこれからも元気で健やかに、幸せな日々をゆっくり過ごして欲しいです」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)