「後ろ足を引きずって歩いている子猫がいる。治療してあげたいけど捕まらない!」

 1枚の写真とともに、ノラ猫・保護猫専門のお手伝い屋さん『ねこから目線。』にSOSの連絡が入ったのは2020年9月のことでした。写真に写っていたのは、両方の足の裏が上を向いてしまった子猫。足の甲を地面に着けて引きずっているようです。

 スタッフは大阪市住之江区の現場に緊急出動。そこには写真で見た通り、後ろ足を引きずって歩く子猫がいました。でも予想に反して歩き回る元気はあり、オヤツで誘導しても捕獲器に入ってくれません。スタッフは網を使ってなんとか捕獲し、動物病院へ連れて行きました。

「生後3〜4カ月くらいでしたが体重は550グラムしかなく、明らかに小さかったですね。後ろ足はまったく利きませんでした。でもレントゲンを撮っても骨には異常がなく、先天性か事故によるものかも分かりませんでした。こうなると、病院でしてあげられることはありません。栄養状態が悪かったので点滴をして、少し風邪を引いていたのでその処置をしたくらいですね」

 当時の様子を説明してくれたのは、子猫が搬送された『一犬猫病院』(大阪市北区)に看護師として勤務する近澤祥可(よしか)さん。同病院には『TNRセンター』があり、ノラ猫のTNR(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)の「N」の部分を担っているほか、保護された猫や犬の診療も行っています。そして、近澤さんは『NPO法人 おおさかねこネット』代表で、家には28匹もの保護猫がいるという猫のスペシャリストです。

「基本的にはTNRをして、リリースできない子を里親さんにつなげるのが主な活動ですから、それができない子をうちで、ということになりますね」(近澤さん)

 つまり、近澤家にいるのは病気の子やケガをしている子、障がいのある子など、里親さんを探すのが難しい子ばかり。「もしかすると、そういう子の里親さんになりたいと言ってくださる方もいるかもしれないけれど、私が手放せないんです。ちゃんとお世話してくれてるかな、病院に連れて行ってくれてるかなと、毎日そんな心配をして暮らさないといけないと思うと、精神的によくないので」。そう言って、近澤さんは苦笑いを浮かべました。

 下半身不随の子猫も3週間余りの入院を経て、近澤さんちの子になりました。「保護主さんはおうちに入れられない事情があって行くところがないと聞いたので。元いた場所に返すことになるのなら、うちでと思ったんです」。オムくんという名前は「オムツを着けないといけないだろうなと思って」付けたそうですが、ほふく前進で歩くと脱げてしまうため結局オムツはしていません。

「オシッコとウンチは自分で出せるのですが、意識がないところで出すから、気を付けていないとオシッコまみれ、ウンチまみれになってしまう。注意しているのはそれくらいですかね。他の子とも仲良くできますし、必ずみんなの真ん中にいるんですよ。センパイたちが守ってくれているのかもしれませんね」(近澤さん)

 オムくんは毎日、近澤さんと病院へ同伴出勤。仕事中はケージの中ですが、抱っことなでられるのが大好きな甘えん坊なので、時間があれば抱っこしてあげているそうです。食欲旺盛で体重は2.5キロまで増えました。

「あの足で外で暮らすのは難しかったと思います。この冬を越えられたかも分かりませんし、見つけてくれた方がいてよかったです」(近澤さん)

(まいどなニュース特約・岡部 充代)