ここ最近バイクの値段が上がったと感じている人は少なくないと思います。バイク全体の価格として、1985年を100とすると2020年は110、というデータがありますが、最近発売されたホンダのCT125(ハンターカブ)の価格が45万円台、という辺りを見ても、実感としてはもっと激しく値上がりしているように感じます。

 そんな「バイクって、高くなったよね」っていう普通の人の感覚から、さらにぶっ飛んだ高価な趣味のバイクがあります。世界に数百台、さらには数十台という希少なスポーツバイクの世界です。

ビモータという高級バイクメーカー

 ビモータという、イタリアのバイクメーカーがあります。元々は1966年に空調設備の会社として出発しましたが、創業者の一人がバイクマニアでした。持っていたホンダのバイクが壊れたときにフレーム(車台)を自作して修理したのをきっかけに、1973年から会社としてバイクの製造をするようになりました。

 バイクの製造といっても小さな会社ですから、一から全て造るのではなく、エンジンやサスペンション、ブレーキといった部品はそれぞれのメーカーから供給を受けて、ビモータはフレームとカウリングを作ってバイクに仕立てていたのです。それも当初は年産数十台の小さなメーカーでしたから、当時はたとえばエンジンだけを供給してくれる会社などもなく、「完成品のバイクを購入してエンジンを取り出して」という非常にお金の掛かることをしていました。なので結果として、ビモータのバイクはどれもとても高価なものになりました。

カワサキとビモータが合弁会社を設立した

 その後、栄光と挫折の紆余曲折を経て休眠状態になっていたビモータは、2019年に日本の川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニーの欧州法人と合弁会社を設立します。平たく言えば「カワサキのエンジンを積んだビモータが新しくできる」ということですね。

 カワサキは2015年、ニンジャH2というモデルを発売しました。これにはスーパーチャージャーを組み込んで1000ccの排気量から200馬力のパワーを発揮する、新開発のエンジンが搭載されていました。そして今回の合弁で、このものすごいエンジンを積んだビモータが誕生することになったのですね。

テージH2…税込み866万8000円なり

 ビモータ、テージH2。前輪にビモータが1980年代から研究・開発してきたハブセンター・ステアリングという方式を採り入れたフレームに、ニンジャH2のエンジンをチューンしたものを搭載した最新鋭のバイクです。世界限定250台、価格は税込み866万8000円。「最近のバイクは高くなった」とか、そういう枠の外というか埒外の価格ですね。しかしこれはエンジンの製造元からエンジンだけが、それも同じ社内なのだから社内価格(というのでしょうか)で供給されてのこの価格です。もしも昔のビモータのように完成車を一台買ってきて、という方法で作った場合に比べると、きっとかなり割安なのだと思います。

 今回、このテージH2の日本上陸第一号を、日本総輸入発売元のMOTO CORCEさんで拝見させていただきました。900万円近いやんごとなく貴いバイクなので、思わず過剰な丁寧語になってしまいます。さらに畏れ多くも跨がらせていただきました。フロント回りのものすごいボリューム感(羽根が付いてますからね)、シートの高さ(高い操縦性を発揮するため、スポーツバイクはシートが高いのです)、ころっとこかしたら数百万円という心理的なプレッシャー、その他諸々に圧倒されてしまいました。「よかったらちょっと乗ってみますか?」というお店の方のお言葉に、いやいや今日はちょっと、いえいえもうこれだけで充分で、などと言葉を濁しつつご辞退いたしました。

 お店の中にはこのテージH2だけではなく、世界限定26台1500万円超えのモデルなど、様々な超高級スポーツバイクがずらりと並んでいらっしゃいまして、それはもうめくるめく魅惑の空間でした。ここでめくるめいて転んでバイクの将棋倒しなんてなると大惨事だなあなんてふと頭をよぎる、そんな週末でありました。

(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)