東京五輪・パラリンピック式典演出の責任者であるクリエーティブディレクターの佐々木宏氏が五輪開会式で、タレントの渡辺直美をブタに例える侮辱演出を提案していたことが判明した。大会組織委の橋本聖子会長が会見して謝罪し、佐々木氏の辞任を発表した。佐々木氏はLINEの「グループLINE」において渡辺をブタに例えたとされる。人をブタに例えることは侮辱罪や名誉毀損罪に該当するのか。かつてアイドルとして活躍し、弁護士に転身にした平松まゆき氏にQ&A方式で解説してもらった。

 Q 一般的に言って、他人をブタに例えることは、名誉棄損罪や侮辱罪に問われるのでしょうか?

 A 名誉棄損罪(刑法230条1項)と侮辱罪(刑法231条)とは、いずれも公然と他人の社会的評価をおとしめる行為を罰する点では同じですが、「事実」を摘示したかどうかで区別されます。

 例えばある特定の人を名指しして「Aは枕営業している」などの発言は、枕営業という「事実」を摘示していますから、それが本当だろうが嘘であろうが、名誉棄損罪が成立し得ます。これに対して「Aはブタだ」という発言は、そう思っている人の意見や感想にすぎず、「事実」ではありませんから名誉棄損罪は成立しません。かといって、立件(刑事事件化)に至るには、行為の悪質性や被害感情等も考慮されますから、ブタという発言だけで侮辱罪に問われる可能性も低いと思います。

 Q そうなると、民事上の問題ですね。慰謝料請求はできるのでしょうか。

 A グループLINEでのトークは、仲間内での発言であることが、しばし問題になります。つまり、グループLINEは、招待を受けた特定の人々の間でしかトークができません。このことから、たとえ誹謗中傷を受けたとしても、それは「公然と」なされていないのではないか、という話になるわけです。法律は理屈っぽいと嫌われる所以です(笑)。

 Q たしかに理屈っぽいですね。そうすると、内輪なら何を言っても許されるということでしょうか?

 A いいえ。直接には、特定の限定された人々に対して行われた場合でも、それが不特定多数人へと伝播する可能性があるときは、「公然」にあたると考えられています。グループLINEのケースではないのですが、過去に、メーリングリストという特定の限定された人々に対しての発言であっても慰謝料請求を認めた裁判例があります。この裁判例は「メールは転送が可能」ということにも触れていますから、不特定多数人へと伝播する可能性を認めたと言え、グループLINEでも同じ理屈になると思われます。

 Q 名誉棄損に関する法律相談は多いですか?

 A 多いですね。昔は媒体が、手紙とか文書だったので、伝播可能性はそれほど高くなかったかもしれませんが、いまの時代、ちょっとした一言でも、簡単に、大量に、無限に拡がる可能性があります。そして一度インターネットに拡散された発言は、半永久的に消えることはありません。自身の発言には気を付けなければなりません。

◆平松 まゆき 弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。2010年に名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。