黒猫は、古来より日本では魔除けの象徴。これが転じて幸福の象徴と言われています。ただの言い伝えと思いきや、静岡県三島市に住む黒猫のクロくんは、家族に様々な幸福をもたらした猫なんです。

クロくんの飼い主は、フリーランスの編集者でグラフィックデザイナーの樋口かおるさん。夫は落語家の笑福亭羽光さんです。息子さんが通っていた美術教室のマスコットが、クロくんだったそう。警戒心がなく、子供たちの輪の中に飛び込んでいく猫でした。

樋口さんの家ではそれまでも猫を飼っていましたが、死別。「別れは悲しいし、大変だからもう猫は飼わない」と決めていました。でも、猫らしくないクロくんの姿に驚いて、今はどうしているだろう…といつも気になるように。屋内で育ててくれる里親を募集していたクロくんを、里子にもらうことにしました。2014年のGWのことでした。

保護するとなると、人懐っこい猫でも怖がってしまうかもしれない。そう考えた樋口さんは、キャリーバッグでなく大きめのトートバッグでクロくん保護を試みます。クロくんのテリトリーである美術教室の庭に足を踏み入れ、おびき寄せようとした時に驚くべきことが…。

なんと、クロくんが自らトートバッグの中に入ってきたのです。それはあたかも、「やっと連れて帰ってくれるんだね」と言っているかのようでした。

美術教室の人たちも呆気に取られます。お別れもなしに、最初から樋口さんの家の子という感じになったのですから。「クロ」の名前はそのままに、樋口さんの家でのんびりと暮らすようになりました。

招き猫の本領発揮!?家族の運気がぐんぐん上昇

それから不思議と、樋口さんに猫関連の仕事が舞い込み始めます。ケニア・ドイ著『ぽちゃ猫ワンダー』(河出書房新社)の編集・デザイン担当を皮切りに、猫雑貨のデザインも手掛けるように。

クロくんは、より福々しい姿にランクアップ。美術教室ではスリムな姿だったのが、横にも縦にも大きくなります。見た目もまさに招き猫!とても社交的な猫で、来客にはニコニコ接待です。樋口さんとお客さんが並んで歩いていると、さりげなく横を歩くコミュ力の高さもあるのだそう。

招き猫クロくんは猫も招きます。その猫とは樋口さんの家のもう1匹の猫、チビちゃんです。新たに手掛ける猫本の初めての打ち合わせの朝、生後2週間ほどのチビちゃんがふらりと現れたんですって。それも、樋口さんがクロくんを抱っこして庭に出た時に。

生後約2週間ですから、貰い手を探そうとしました。が、クロくんに招かれたチビちゃんは、「好き好き!大好き!」とクロくんにベッタリ。このまま樋口さんの家の子になります。同じ猫ですら、クロくんの招き猫パワーに魅了されたよう。

ちなみに、2匹とも保護の相談を夫である羽光さんにはしていないとのこと。突然猫がいることに羽光さんは、「おんのか」とただ受け入れただけ。

クロくんにもチビちゃんにもあまり関心のない羽光さんですが、猫たちには好かれています。興味がない分、嫌なことも一切しないからでしょうか。

樋口さんはこう言います。

「うちの猫たちは、寄り添うというより勝手に過ごしているタイプです。人間に嬉しいことがあっても辛いことがあっても、どうでもいいという感じ。夫もそのタイプで、それがかえってとても気楽です」

もしかすると、羽光さんは猫たちに仲間だと思われているのかも?

羽光さんも落語で快挙!これもクロくん効果?

そんな羽光さん、クロくんが来てから自身が手掛けた新作落語『ペラペラ王国』で「渋谷らくご創作大賞」と「NHK新人落語大賞」を受賞!特に「NHK新人落語大賞」の新作落語での受賞は快挙なんです。これも招き猫効果?

仕事柄、不規則な生活になりがちな樋口さんですが、猫たちの動じない性格にとても助けられているのだとか。徹夜明けで昼間に寝ても「一緒に寝ようか」、真夜中に活動していても「そんなもんだよね」。

クロくんとチビちゃんの存在について樋口さんにうかがうと、こんな答えが。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)