長引くコロナ下で自粛生活に癒しを求め、過熱するペットブーム。その一方で、しつけや世話が思うようにできず、ペットをもてあまし、保護団体に引き取りを依頼する飼い主も急増しているとか。そんな中、2020年暮れに大型の保護犬ワイマラナーが新しい家族に出会いました。

保護犬を家族として迎え入れたある家族の決断

 コロナ禍が長引く中、テレワークの普及などによる「おうち時間」の増加と自粛生活のストレスも重なってペットを飼う人が増え続けているそうです。その一方で動物愛護団体にはペットをもてあまし、飼育を放棄。保護を求める飼い主が後を断たないとか。

 そんな情況にあった2020年11月、兵庫県のあるボランティアが運営している保護団体に1匹の大型犬が持ち込まれました。1歳になるワイマラナーです。日本ではあまり聞き慣れない名前の犬種ですが、オリーブグリーンの毛並みは美しく、クールな顔だちと体型が特長の猟犬です。

 もとは飼い主がある事情で飼えなくなり、ワイマラナー専門の保護団体に引き取りを依頼しました。「シエル」というメス犬で体重は20キロ。がりがりに痩せ、大きな目をキョロキョロさせ、おどおどした様子だったといいます。

 保護団体のサイトを見て、シエルの存在を知ったのが大阪府箕面市に住むAさんでした。Aさんは15年前に捨て犬として警察署で保護されていたワイマラナーを引き取った経験があります。「ナラン」という名のその犬が7年前に死んだ時「2度と大型犬は飼えないな」と思ったそうです。

 というのも死期が迫り、病院通いが日課になると治療費がかさみ、貯金が底を尽いてしまったからです。しかし、主治医は安楽死を認めません。「最後まで一緒に頑張りましょう」と励まされ、やがてナランは眠るように旅立っていきました。

娘の後押しで再び保護犬を飼う決意

 ナランが死んで5年が過ぎた頃から、Aさんはナランが生きていた日々をよく思い返すようになりました。2人の娘が就職や進学で家を離れたことで、家中に笑顔が絶えなかった日々が急に懐かしくなったのだ、と言います。

 そんなある日のこと。たまたまのぞいたワイマラナー専門のサイトに掲載されていた不安そうな眼差しの犬の写真を見た瞬間、Aさんは居ても立ってもいられなくなったそうです。しかし、経済的な問題を考えるとすぐに里親になるという決断はできませんでした。

 その時、Aさんの背中を強く押したのが社会人となり、東京で暮らす次女のY子さんでした。「老後には私もお金を出すからうちで飼ってください」と何度も電話をしてきたそうです。それでAさんも「これからは早起きして仕事前に犬の散歩に行こう」と決めました。

里親にとって保護犬は天の恵み「祝福されし者」

 Aさん一家と一緒に暮らすことになった保護犬シエルに長女が新しい名前をつけました。「ベアテ」です。ベアテとはドイツ語で「祝福されし者」という意味です。Aさんが一番驚いたのは、時おり見せるベアテの横顔が死んだナランとそっくりに見える時があることでした。ナランが帰ってきてくれた。そうAさんは確信したそうです。

 ベアテは環境の変化に戸惑ったのか、エサが合わなかったのか、家に来た当初は下痢でさらに2㌔も痩せてしまいました。また、それまでずっと室内で飼われていたため、犬同士の社交経験がほとんどありませんでした。散歩中何かに驚き、足がすくむこともありました。

 しかし、箕面市の山あいの町にやってきて5カ月。体重も元に戻り、筋肉がつき、おどおどしたところはなくなりました。その分いたずらがエスカレートして、いまや一家の女王様気取りだそうです。

 「ワイマラナーは飼うのが大変なんです。頭がよくていたずら好き。きっちり人間の裏をかいて悪だくみを仕掛けてきます。その反面、超さびしがり屋で、昼夜を問わずぴったりまとわりついてくるので一日中なにもできないということも珍しくありません。だから手に負えなくて手放す人が出るのでしょう。でも、わずか10年しか一緒にいられないので、せめてその間だけは幸せでいてもらいたいんです」。そう話すAさん自身も「祝福されし者」に違いありません。

(まいどなニュース特約・山中 羊子s)