国道というと普通「道路だから歩いたり走ったりできるのが当たり前」と思われるでしょう。しかし、国道の中には海を渡っているものがあるのです。そしてそれは橋やトンネルで繋がっているとは限りません。今回はそんな海上国道についてご紹介します。

宇高国道フェリーが繋いでいた国道30号

 関西地方に住んでおられる方でしたら、もしかすると昔こういうラジオCMを聞かれたことがあるかもしれません。

 「北欧調のサロンで優雅な船の旅(この辺りちょっと筆者の記憶が曖昧です)。待たずに乗れる海のハイウェイ、宇高国道フェリー、宇高国道フェリー……」

 この最後の部分、女の人の声で「うたかこくどうふぇりー」というのを二回繰り返すのですが、その二回目の部分、なんとなくその響きというか余韻に妙にレトロな感じのエコーがかかっていて、実にどこか遠くの世界へ誘う感じがあったんですね。いや、当時多感な子供だった筆者にはそう聞こえた、というだけなのかもしれませんが。

 宇高国道フェリーと並行してJRの宇高連絡船も運航していましたが、こちらは「うたか」ではなくて「うこうれんらくせん」でした。「うたかこくどうふぇりー」というと「いやいや違う、あれはウコウと読むんや」と訂正される年配の方がたまにいらっしゃいますが、それぞれ正しい呼び方だったんですね。

 この「宇高国道フェリー」というのは岡山県玉野市の宇野港と香川県高松市の高松港を結んでいました。これは国道30号の海上区間で、このフェリーの航路がつまり国道だったのです。

 宇野から高松までの所要時間は55分、「待たずに乗れる」のキャッチフレーズ通り19分間隔で24時間運航していました。

 また、車両の乗れない旅客船ですが、この航路には一時「ホーバークラフト」も就航していました。乗り物の名前としては正しくは「ホバークラフト」なんですが、この航路のは「ホーバークラフト」と表記されていて、最高時速80キロ、20分ほどで高松に着いてました。

 そのように栄えていた宇高航路ですが、瀬戸大橋が開通して、さらにそのあと通行料が安くなったこともあって乗客が減りました。そして宇高国道フェリーは2012年10月17日、並行していた四国フェリーも2019年12月15日をもって終了、現在この宇高航路は無くなってしまいました。

 なお、瀬戸大橋は現在この国道30号の自動車専用道路部になっています。

明石海峡は国道28号の一部

 本州と四国を結ぶ国道は5路線ありますが、かつてフェリーが就航していて橋が繋がったことで廃止になったといえば、もう一つ国道28号があります。この道路もまた、明石海峡と鳴門海峡で海を渡っていました。明石海峡を20分で結んでいたフェリーは「たこフェリー」と呼ばれていて、たこのイラストが描かれた船は地元を中心に親しまれていましたが、宇高航路同様こちらも明石海峡大橋ができて乗客が減って、2010年11月15日に終了しました。

 この航路が無くなって以来、高速道路を走れない原付バイク(125cc未満)は海峡が渡れなくなってしまいました。鳴門海峡のフェリーも廃止されてしまってましたので、「淡路島の原付は島から出られない、本州にも四国にも渡れない」という実にガラパゴスな境遇に追い込まれたのですが、2015年に旅客船のジェノバラインが125cc未満の二輪車を載せてくれるようになって、現在その状況は解消されています。

海を渡る国道は現在、全国に24路線(橋やトンネルで繋がっていないもの)

 このようないわゆる海上国道で、さらにいま現在橋やトンネルで繋がっていないものは全国に24路線あります。その中には国道260号の英虞湾の部分や、国道224号の鹿児島湾西桜島水道のように将来橋を架ける計画があるような短いものもあれば、鹿児島から沖縄を繋ぐ海上区間609キロという、国道58号のような「ガチで海の上の国道」といったものまで様々です。有名なところでは、あの青森と函館の間の津軽海峡も国道279号の一部です。

 海を渡る国道。「宇高国道フェリー……」の女の人の声じゃありませんが、なんとなく遠くへ誘ってくれるような、旅心をくすぐる道ではないでしょうか。

(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)