野良猫のミミちゃん(1歳3カ月・メス)は、民家の庭に住み着き、3匹の子猫を産んだ。家主のAさん一家はずっとミミちゃんが妊娠する前からずっと見守っていたが、どうしても飼うことはできなかった。しかし、それでも妊娠したミミちゃんと産まれてくる子猫たちを何とかしなければならないと思った。

庭に住み着いた猫

2020年5月、初めての緊急事態宣言とSTAY HOMEで街は静まりかえり、人気がなくなったせいか、東京都に住むAさんは、近所では沢山の野良猫を目撃するようになった。自宅の庭にも猫たちが遊びに来るようになった。お腹を空かせているだろうと、Aさんは庭にえさと水を置き始めた。

7月下旬、小雨の降る夜、Aさんは庭で初めてミミちゃんを見かけた。

「軒下にある置きエサを食べたあと、レンガの壁に両手を押し当て、伸びをしていました。他の野良たちよりも明らかに体が小さくあどけない表情で、まだ子猫だと思いました」

8月初旬、耳が大きいから「ミミ」と名付けた。他の野良達は複数で行動することが多かったが、ミミちゃんはいつも1匹だったので孤独に見えたという。

8月中旬、Aさんはミミちゃんと少しずつ仲良くなった。話しかけたりおやつをあげたりしていたら、そ〜っと頭をなでさせてくれるようになった。いつしかミミちゃんは、Aさんや家族が帰宅すると、甘えた鳴き声で庭に現れるようになった。夜は他の野良猫と喧嘩することがあり、下まぶたと腰に引っ掻き傷を作ったこともある。

気が付くと、ミミちゃんは庭で生活するようになり、家の中にいるAさんたちに「おうちに入れて」と言わんばかりによく鳴いていた。

子猫が産まれた!

Aさん一家は事情があってペットを飼うことができなかった。ミミちゃんにえさと水を与えて見守っていたが、ミミちゃんのお腹が膨らんできた。9月初旬、さらに大きくなったお腹を見て、妊娠していると確信。獣医師に相談したところ、「家で飼えないのであれば、そのまま放っておくべき」と助言された。

臨月のようだからすぐに出産するだろうと言われ、Aさんは焦った。放っておけるわけもなく、友人に相談し、家族で話し合い、とにかくこれからどうするか考えた。

2020年9月5日の朝、庭にいるはずのミミちゃんの姿が見えず、「ミミ〜?」と呼んでみた。すると、少し離れた場所から、かすかに「にゃ〜」と、か細い声が返ってきた。「あれ?どこにいるの〜?ご飯だよ〜!」と探すと、ミミちゃんは植木の茂みの中で、2匹の赤ちゃんにお乳をあげていた。「産まれた〜〜〜!!!!!!」思わず叫んた。

1匹の赤ちゃんは近くの地面に落ちていた。Aさんは慌てて赤ちゃんを拾い上げ、玄関に用意してあった即席の産箱に移した。ミミちゃんは素直に家の中に入ってくれた。この時、ミミちゃんは生後7カ月くらいだったと考えられている。

撫でられるのは機嫌のいい時だけだけど

東京都に住む萩原さんは、猫を飼いたいとずっと思っていたが、家族に反対されていた。もし飼うのなら保護猫がいいと思っていた。友人から「猫を飼える人を探している」と連絡があり、ミミちゃんの写真を見た時、すぐに飼いたいと思い家族を説得した。

飼うと返事をした翌日、子猫が産まれたと連絡をもらってびっくりしたが、母猫と子猫1匹なら面倒を見ることができると思い、親子で引き取ることにしたという。

「Aさん宅でミミちゃんに初めて会った時、小柄なのに立派なお母さんだと思いました。子猫は3匹いたので、一番母猫と相性の良さそうな子を希望してゼンちゃんを引き取ることになりました」

保護主のAさん夫妻が家まで連れてきてくれた。ミミちゃんは、最初はケージから出なかったが、ゼンちゃんが好奇心旺盛だったのでケージから出て探検するのを見て、翌日には出てくるようになった。

3日目くらいに、母猫ミミちゃんがごはんを食べないので動物病院に連れて行くと、肝機能の数値が非常に高く、獣医師に先天的なものなら長生きできないかもしれないと言われた。毎日点滴をしに病院に連れて行って治療をしたら、どんどん数値が良くなってきてごはんも食べるようになった。

「元野良猫の母猫ミミちゃんは、抱っこしようとすると逃げるし、ごはんをあげてもすぐには食べないし、撫でさせてくれるのも機嫌の良いときだけです。でも、少しずつ慣れてきてくれたし、このままいい距離感をもって心地よく暮らして欲しいと思っています。息子ゼンちゃんは人慣れした甘えん坊。一緒に引き取れて良かったと思います」

萩原家は、朝、ミミちゃんが起こしに来るのですっかり朝型の生活に。家族の会話も増え、すっかり猫中心の生活を送っているという。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)