玄乃ちゃん(1歳・オス)は、山梨県から東京都の保護団体「保護猫広場ラブとハッピー」にやってきた子猫チームの一員だった。玄乃ちゃんの母猫なのか違う子猫の母猫なのかは分からないが、一緒に保護された母猫が、我が子でない子猫も分け隔てなく育てていたという。

東京都に住む酒井さんは、当時2度目の結婚をしたところで、新生活を機に猫を迎えたいと考えていた。

「以前黒猫を飼っていた再婚相手は、『飼うなら再び黒猫が良い』と言っていたので、2020年7月1日、ふたりで「保護猫広場ラブとハッピー」を訪問しました。その時、わずか10分前にやってきたという子猫チームに会ったんです。その中にいたのが玄乃と結汰でした。2匹は兄弟ではありませんが、とても仲良しです」

酒井さんは当時、8匹の先住猫を飼っていたので、玄乃ちゃんを1匹で迎えると孤立してしまうかもしれないと思った。もう1匹子猫がいれば大丈夫だろうと結汰くんも一緒に迎えることにした。玄乃ちゃんは結汰くんより1カ月若く、生後1カ月前後だったので、最初のワクチン接種が可能な時期まで譲渡を待つことになった。

人間も猫も大好き、ベタベタしたい

玄乃ちゃんは、同時に保護された他の兄弟姉妹よりも1カ月若かったせいか、シェルターでは、いつも他の子の下敷きになっていた。三角形の頭だけが大きく、伸びて寝ている姿はまるで矢印のようだった。

しかし、8月7日、酒井家に来ると、様子は一変。気の小さかった結汰くんとは正反対で、物怖じせず探検好き、好奇心旺盛だった。人間のことも猫のこともみんな大好き、誰とでも仲良くなりたい友好的な猫だ。先住猫たちは、ベタベタしてくる玄乃ちゃんに当初は迷惑そうな顔をしていたが、いつしか一緒に寝たり遊んだりしてくれるようになった。とりわけ新之助くんと実依ちゃんとは仲が良いそうだ。

名前は、英語で時を意味するchrono(ギリシャ語のkhronosが語源)と、黒猫なので日本語の「クロ」を重ねた。漢字で「黒」ではなく「玄」を選んだのは、玄乃ちゃんの毛並みがやや赤みがかった黒色をしていたからだという。

思春期の娘との会話に欠かせない存在

玄乃ちゃんは、子猫の頃からずっと、お腹が空くとビービー鳴いておねだりする。

「まだ800グラムしか体重がないのに一度に150グラムも猫缶を食べるものだから、一体この小さな体のどこに入っていくのだろう?と不思議に思ったものです」

脚と尻尾は長いが、細身で軽量なので、年中新之助くんにクロネコヤマトのロゴのように咥えられ運ばれている。玄乃ちゃん自身もそれは決して嫌ではないようで、あえて新之助くんの前まで行ってゴロリと寝転がってみせることもある。

酒井さんには思春期の娘がいる。難しい年齢なので会話に困ることもあるが、玄乃ちゃんが共通の話題になってくれている。「今日の玄乃」で夕食の食卓の会話が弾むという。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)