祭壇が豪華でなくてもいい、参列者が少なくてもいい。心のこもった簡素なお葬式を望む利用者が増えているという。とくに今はコロナ禍で、参列を遠慮してもらったり、控えたりせざるを得ない事情もあるだろう。筆者も先日、亡くなった母を簡素化した葬儀で見送った。料金が安いことに不安もあったが、少人数で行った「小さなお葬式」の体験はとても濃密なものだった。

■故人を送り出す実感がより強く湧いてくるような…

筆者の母が86歳で死去したのは今年の3月のこと。胆管ガンの末期で、入院先の主治医から「余命は長くない」と聞いていたから、慌てなくてもいいように前々から簡素な葬儀について資料を取り寄せて調べていた。派手な葬儀は望まないという母の遺志もあったので、時節柄もあり家族だけで済ませるつもりだったのだ。

筆者が選んだのは、株式会社ユニクエストが展開する「小さなお葬式」。お葬式とその周辺で発生する雑事をパッケージ化し無駄を削ぎ落した低価格のシンプルなセットプランを提供している。10人程度の参列を想定した家族葬であれば、5つのプランが用意されている。筆者はその中から「小さな火葬式」プランを依頼した。

料金は税込17万4900円。これで「病院から安置場所まで遺体の搬送」「安置室利用料(3日分)」「ドライアイス(3日分)」「お別れ用花束」「死亡届・火葬許可など諸手続き代行」「棺及び骨壺」「火葬場への搬送」などの料金を含んでいる。

料金が安いとなれば心配になるのが「どこかに手抜きやサービスの低下がみられるのではないか」ということ。たとえば遺体の扱いが乱雑だったり、火葬場での手続きを自分でやらないといけないかと思ったりしたが、実際そんな心配はまったく無用だった。スタッフは常に私たちを気にかけてくれて、参列者の多い一般的な葬儀と比べたら、故人をこれから死後の世界へ送り出す実感がより強く湧いてくるような気がした。

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ちなみに、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」から葬儀費用の全国平均を算出すると約133.6万円(2019年度)になるそうだ。葬儀の規模にもよるだろうが、かたや税込17万4900円である。この料金の差には驚いてしまう。実際に母の葬儀を取り仕切っていただいたスタッフによると、このように簡素な葬儀は最近増えているのだという。

株式会社セレモニーYURIが、2021年3月に公表した「コロナ禍における葬儀に関する意識・行動調査」によると、葬儀主催者の8割が「葬儀の簡略化・省略」を選択したという。葬儀の簡素化を選択した人のうち約半数が「できれば通常通り葬儀を行いたかった」と回答したというが、逆の見方をすれば約半数が、簡素化された葬儀を積極的に選択したともいえる。

また、公正取引委員会が2017年に調査した「葬儀の取引に関する実態調査報告書」によると、葬祭にかかわる業者に「増加傾向にある葬儀の種類」を聞いたところ、「家族葬」との回答が5割を超えたほか、「直葬」「一日葬」も比較的高い割合を占めたという。2017年にはまだコロナの脅威はなかったものの、葬儀を簡素化する傾向がすでにあらわれていたようだ。

これは時代のトレンドなのか、それは今後も続くのか。簡素化された葬儀に関して、筆者が実際に利用した「小さなお葬式」広報の佐藤寛子さんに聞いてみた。

■「葬儀会館」を持たないことで、安価な葬儀を実現

――「お葬式は何十万〜何百万円ものお金がかかる」という認識が根強いですが、一般的に葬儀の料金設定は何を根拠に設定されるのでしょうか。

「人件費や資機材のほか、葬儀会館を保有している葬儀社は、その維持費もお客様からいただく費用で賄います。葬儀会館が稼働しなくても維持費は発生するわけですから、葬儀1件あたりの単価を上げることで補おうとするから高くなってしまいます」

――葬儀会館を持たないことが、「小さなお葬式」が安価な葬儀を実現できた理由なのでしょうか。

「弊社と提携している葬儀社様は、それぞれ自社でも葬儀を行いますが、それだけだと葬儀会館が稼働していない日ができてしまいます。葬儀会館が空いているときに弊社から葬儀を依頼する『空室稼働』に目を付けたことが、いちばんの理由です。また、弊社では業界の不透明を透明にしていくことをモットーとし、物品・サービスをひとつひとつ適正価格に見直したことも、低価格化を実現できた理由のひとつです」

■低価格で明瞭会計…高い「満足度」に

――「小さなお葬式」を展開されようとしたきっかけは何ですか。

「2006年の創業当時は、全国各社の葬儀費用を比較できるサイトを運営しておりました。その中で浮き彫りになったのは、物品やサービスの金額が葬儀社によってバラバラで、相場が存在しないという業界の課題です」

「また、必ずしも盛大な葬儀を求めていない人にフィットする葬儀プランがありませんでした。そうした方々に向けて、コンパクトな葬儀の選択肢をもっと広げたいという思いがありました。しかも葬儀は、ほとんどの人が初心者で、右も左も分からない状況です。お客様が本当に求めている葬儀を追求した結果『これさえあれば葬儀ができる』という物品やサービスをパッケージ化して、低価格で明瞭会計のセットプランを打ち出したのが2009年のことでした」

――葬儀社に対する「満足度」は何で決まると思われますか。低価格ゆえに「安かろう、悪かろう」と捉えられることはないでしょうか。

「弊社は決してサービスの質を落としているわけではなく、お客様一人ひとりの最期の時間までサポートさせていただきます。提携葬儀社とよりよい関係を築いて『頼んで良かった』と思っていただけるご葬儀を実現させること、価格以上の満足をしていただくことが、最終的に高いお客様満足度につながると考えています」

――「小さな火葬式」「小さなお別れ葬」「小さな家族葬」などさまざまなプランが用意されていますが、最も利用数が多いプランは何でしょうか。

「最も利用が多いのは、通夜をせず告別式のみの『小さな一日葬』です。葬儀が1日で完結するので、利用者様と参列される方の双方に負担が少なく『ちょうどいい感覚』のようです」

――利用者から感謝されたことはありますか。

「電話対応においては、お身内を突然亡くされて混乱している中で、慣れない葬儀の準備の進め方を丁寧に教えてくれたとか、てきぱきと段取りをしてくれて頼もしかったといったお声をいただきます。葬儀は提携している葬儀社様にお願いすることになりますが、故人の好きだったものを紙で作成して棺に納めたり、葬儀スタッフの細やかな心遣いがあったりして、我々にも『素敵な会館でできて良かった』と感謝のお言葉をいただけることがあります」

――筆者が母を亡くしたとき、御社のお世話になりました。深夜にもかかわらず、連絡してからわずか40分で遺体を引き取って搬送するという、ひじょうに迅速な対応でした。

「自社でカスタマーサポートセンターを構え、24時間365日お電話を受けています。またご遺体のお迎え時間を短縮できるよう提携葬儀社を増やし、近隣にて手配を行えるよう体制を整えております」

――葬儀はいつも突発的で予定できないものですが、葬儀場はどのように確保するのでしょうか。

「葬儀場の常時確保はしておらず、提携葬儀社を増やすことで極力お客様の要望にそえるよう努力しております」

■これからますます進む「葬儀の簡素化」

――御社の主力はいわゆる「家族葬」だと思いますが、コロナ禍の今実際に増えていますか。

「弊社ではコロナ前から、ご家族を中心とした小規模な葬儀をメインでお受けして参りました。コロナが流行してからは、家族葬の中でもさらに小規模で、式を行わない『直葬』形式が多く選ばれるようになりました。第1波のときは一時的に直葬が、式を行う葬儀の件数を上回ったこともあります」

――年間の取扱数はどれくらいでしょうか。新型コロナウィルスの流行前後で差はありますか。

「2020年度の葬儀受注件数は5万6000件です。これは前年度、すなわちコロナ流行前の1.2倍にあたります」

――今後は葬儀の簡素化が進むでしょうか。

「葬儀の簡素化・小規模化は、さらに進むと考えています。コロナ禍で、はじめて小規模の葬儀を経験された方も多いのではないでしょうか。そうした方々の中で『小規模もいいよね』という認識が広まれば、より多くの方に弊社のサービスがフィットし、望まれるようになると考えています」

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前段で母の死去に触れたが、折しもコロナ禍で世は自粛ムード。友人知人はもちろん親戚でさえ参列を遠慮してもらわざるを得ない状況で、火葬場も1組につき10人程度の入場制限を実施していた。

そんなご時世でも、人が亡くなったら葬儀を出さないわけにいかない。盛大に見送ってあげたいのはやまやまだが、心がこもっていれば、シンプルで小規模な葬式でも故人はきっと満足して旅立ってくれることを確信した。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)