建築家の隈研吾氏がデザインした公衆トイレが、東京・渋谷に作られました。「5つの小屋」と「森のコミチ」で構成され、まるで自然の中にある集落のようなたたずまい。隈氏は「公衆トイレの村」とも表現し、「自然と共生しトイレを楽しむ作品」と説明していますが、いったいどんなトイレなのでしょう?

5つの小屋と森のコミチで構成

東京五輪のメインスタジアムである「新国立競技場」を設計した隈研吾氏。実は1990年代のバブルが弾けたあと東京の仕事が全部キャンセルになり、失意に暮れているときに、最初に来た仕事が高知県にある公衆トイレの設計だったそうです。その経験から20数年の歳月を経て2回目の公衆トイレの仕事だということで、かなり熱が入ったとのことでした。

隈研吾氏は「公衆トイレは、日常や地域に近い建築であるものの、デザイン力がいままであまり関与してこなかったから、画期的なプロジェクトだと感じました」と今回の取り組みについて説明。「(トイレが作られる場所は)緑が深く水車や池もあり、今回のプロジェクトには最適な場所」と楽しみながら設計されたそうです。

公衆トイレがあるのは、渋谷駅からすぐ近くの高級住宅地にある「鍋島松濤公園」。多様性が求められる時代にあった誰でも使いやすい、それぞれが個性豊かなトイレを作りたかったとのこと。外装にランダムな角度の耳付きの吉野杉を贅沢に使うことにより、これまでの箱型のトイレのイメージを払拭しています。

トイレはそれぞれ用途が異なる5つの小屋に分けて作りました。小便器、一般トイレ、幼児用トイレ、だれでもトイレ(多目的トイレ、多機能トイレ)があり、その他には、ベビーチェア、ベビーベッド、オストメイト用設備、フィティングボード、高齢者・妊産婦優先設備などもあります。

また、それら5つのトイレの間にはちょっとした探検気分が味わえるウッドチップを敷いた小道をつくり、通り抜けられるようにしました。夜にはライトアップされ「プチリゾート感」も出しています。

渋谷区で展開する「THE TOKYO TOILET」プロジェクト

この公衆トイレは、日本財団が展開している「THE TOKYO TOILET」というプロジェクトの一環で作られました。公衆トイレが持っている「暗い」「くさい」「汚い」「怖い」という4Kを撲滅し、性別、年齢、障がいの有無を問わず、誰もが快適に使える公衆トイレを設置しようという取り組みです。渋谷区の協力を得て区内に17カ所設置される予定で、トイレの設計には隈氏を含めて世界で活躍する16人のクリエイターが参画しているそうです。

日本財団の笹川順平氏は「建築までが半分、使い始めてからが新たなスタートです。キレイにトイレを使い続けられる国民性を世界中にアピールしていきたい。トイレ清掃員が着用するツナギは(ファッションデザイナーの)NIGO®さんのデザインで、清掃中に利用者から声をかけていだくことも増え、モチベーションが変わってきました。日頃からトイレをキレイに保つことでキレイに使ってもらえるということもわかり、清掃頻度も1日2回から3回に増やしました」と、公衆トイレをキレイに維持する秘訣について話してくれました。

「代々木深町小公園」と「渋谷はるのおがわコミュニティパーク」にある透明な壁が話題だったトイレも、「THE TOKYO TOILET」プロジェクトのひとつ。用を足しているところを人に見られちゃうの!? なんて恥ずかしくなりそうですが、実はトイレに入って鍵をかけると透明なガラスの壁が一瞬で不透明になる仕組み。通電状態でガラスが透明になるため停電時ではスケスケにはならないとのことで安心ですね。

現在完成しているのが今回のトイレを含めて9カ所で、今後は「代々木八幡公衆トイレ」「広尾東公園トイレ」「笹塚緑道公衆トイレ」「恵比寿駅西口公衆トイレ」「七号通り公園トイレ」「裏参道公衆トイレ」「西参道公衆トイレ」「幡ヶ谷公衆トイレ」の8カ所のトイレが2021年度中に使える予定です。東京でトイレ巡りするのも楽しいかもしれませんね。

(まいどなニュース特約・鈴木 博之)