「顧客の声を聞かない」「ユーザーは本当に欲しいものを言葉にできない」

商品やサービスを向上する上での心がけを説いたテキストがSNS上で大きな注目を集めている。このテキストを作成したのは日本ウェブデザイン株式会社代表でHCD-Net認定の人間中心設計専門家、羽山祥樹さん(@storywriter)。

「もし私が顧客に何が欲しいかを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬がほしい』と答えただろう」

世界的自動車メーカー「フォード・モーター」創設者のヘンリー・フォードの言葉を引用しながら非常にわかりやすくユーザーの要望の真意を読み取り方を解説する羽山さんの投稿にたいし、SNSユーザー達からは

「"自分が本当に望んでる物は何なのか"を言わないと魔法のランプも願いを叶えられない。って言葉思い出しました」
「メーカーアンケで"もっと奥行きの小さいエアコンが欲しい"ってニーズがあり、理由が"壁から大きく突き出しているのが嫌"だったから、奥行きを4割減らしたモデルを出したけど、その製品購入者の"もっと奥行きの小さいエアコンが欲しい"割合は減らなかったって話を聞いた事があります(笑)」
「とてもわかり易いです!とても可愛いです! 掘り下げることはとても時間がかかるし根気がいる作業ですけど、根本を解決するには実は最短の方法だったりする。これニーズ把握もそうですけど、業務改善や過誤の原因究明でも共通することですよね」

…など数々のコメントが寄せられている。

羽山さんにお話をうかがってみた。

中将タカノリ(以下「中将」):今回のご投稿のきっかけをお聞かせください。

羽山:僕は「UXデザイナー(ユーザー エクスペリエンス デザイナー)」という仕事をしています。調査をして、ユーザーのインサイトを見つけ、ウェブサイトやアプリ、あるいは工業製品の改善をします。仕事で多くのユーザーの声にふれます。企業にとってユーザーの声は直接的でインパクトがありますが、言われたまま考えることなく受け取るのでは、ユーザーの本当のニーズを解決することができません。正しく受け取るにはコツをまとめて発信したら、多くの方に興味をもっていただけるのではないか、と考えました。

中将:ユーザーの声の真意を読み取るプロとしてご発信だったわけですね。ご自身のお仕事でもこういった事例を経験されたことがおありでしょうか?

羽山:UXデザイナーは、ユーザーに深く話を聞く「ユーザーインタビュー」や、製品を実際にユーザーに使ってもらって様子を観察する「ユーザビリティテスト」といった調査をして、ユーザーのインサイトを理解します。

グルメアプリの改善のためにユーザー調査をした事例を紹介します。「人と一緒にいくレストランを、グルメアプリを使って探すユーザーの心理」です。あるユーザー(Aさん)は「個室のあるお店を選びます」と言いました。また別のユーザー(Bさん)は「個室ではないお店を選びます」と言いました。一見すると、このふたりはまったく逆のことを言っているようです。

しかし背景を掘り下げたところ、Aさんの意図は、実は「相手がリラックスできるように個室のあるお店が良い」というものでした。Bさんの意図は「相手が緊張しないように、個室を避ける」というものでした。つまり、AさんもBさんも「一緒にいく相手がリラックスできるように席を選ぶ」という本当のニーズは同じだったのです。しかし、表面的にはまったく逆の発言につながっていました。

Aさんの言うとおりにグルメアプリを修正しても、Bさんの言うとおりにしても、よい製品はできません。ユーザーの本当のニーズを理解して、製品を改善することです。

中将:ご投稿に対し数々の共感のコメントが寄せられました。これまでのSNSの反響へのご感想をお聞かせください。

羽山:僕は、ウェブサイトやアプリ、工業製品といったものを想定してスライドを作ったのですが、見た方々からのリプでは、製品にとどまらず、営業や接客、介護、夫婦の関係や育児に至るまで、幅広い社会活動で「相手の本当のニーズを掘り下げる」という考え方が大切だよね、という意見が集まりました。あとネトゲやソシャゲの運営会社がユーザー視点でない、という不満もいっぱいありました。

   ◇   ◇

こういった「一歩進めて考える技術」はビジネス以外にも活用できると思う。

羽山さんは今回の投稿についてさらに詳しく紹介するスライドを「slideshare」で公開している。ご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)